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ひろがるスカイ!プリキュア 第44話 「大きなプリンセスと伝説のプリキュア」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第44話 「大きなプリンセスと伝説のプリキュア」 感想

明かされる過去の出来事と伝説のはじまり。

遂に姿を現したアンダーグ帝国を統べるカイゼリン・アンダーグ。圧倒的な力を誇る彼女がもたらす絶望感と間髪入れずに起きた昔のスカイランドへの時間跳躍。エルちゃんと姿や立場が酷似しているプリンセス・エルレインの登場に加え過去に何が起こって今へと至っているのか。伝説のプリキュア、その始まりの瞬間の開示もなされていて非常に振り幅が大きく情報量に満ちた構成になっていた回。

伝承や伝説が過去に起こった出来事を正確に表しているかは定かでないということは、38話でも描かれていたことでありますが、プリンセスであるエルレイン自身が伝説のプリキュアその人であったこと。また、彼女も一人の人間が全てを救うヒーローになることに懐疑的で、皆の力を合わせて敵を撃退したことに一定の自負を持っていたことも見逃せない。

もちろん自称未来人であるソラ達の証言を、一国の姫たる彼女が鵜呑みにするわけにもいかないというのもあるだろう。でも、やはりたった一人の特別なヒーローが全てを背負うのではなく、力を合わせて事に当たるという本作が掲げる理想のヒーロー像に、素のエルレインもまた通じていた。故にその彼女が祖国の危機に際し、本当にキュアノーブルとして覚醒してしまった後の動向が気になるのです。

今のソラ達のように共に戦う仲間がいるわけでもない。それでも迫る脅威を前に愛すべき臣民を守るため立たなければならない宿命を背負う者。その彼女が如何にしてアンダーグ帝国を退け今に伝わる伝説の存在となっていくのか。その顛末も気になるし戦闘の矢面に立つことになったキュアノーブルに、心許すことの出来る理解者がいたのかということも気になる。

一方で過去のアンダーグ帝国側もまた伝説や伝承通りの存在ではないことが朧気ながらも見えてきて。過去の帝国を率いるカイザー・アンダーグは、力こそ全ての現在の帝国の思想を体現したような存在であったが、今の帝国を率いるカイゼリンの過去の姿は、むしろ語り継がれる話や現在の姿とは真逆で、戦いが生むのは涙だけと考える心優しき平和主義者の一面を伺わせる繊細で可憐な少女でありました。

幼きカイゼリンの心根の優しさや思想は、むしろ国同士では敵対関係にあるエルレインに通じるものがあるし、それ故に起きてしまった両者の確執や因縁が、今にまで続く争いの大元になっているとしたらやるせない。その辺りのことは次回描かれるのでしょうが、伝説や伝承にある通りアンダーグ帝国側が悪いという認識も、こうなってくると根底から揺らぐ可能性もあるだろう。

愛する者の為に戦うとスキアヘッドがキュアスカイに告げた回の感想でも書きましたが、今回の一連の過去描写に本作の掲げる理想のヒーロー像や、正義と悪の概念の難しさや複雑さ。そういうテーマに絡む要素が凝縮されていたなと感じます。もしカイゼリンがプリンセス・エルに対して見せる恨みが、愛しき者を奪われたことに起因したものであったのなら…。

直接の当事者でなくともプリキュアは果たして正しきヒーローと呼ばれる存在たり得るのだろうか。どちらが正義でどちらが悪か言い切れない。そこに対して本作が提示する回答がどんなものになるのか。興味は尽きない。

降り立つ気高き神秘!キュアノーブル!いわゆる先代枠に該当するプリキュアになると思うけど、本作の中で伝説のプリキュアとされる彼女の変身シーンを見られるとは思ってなかったので、これは嬉しいサプライズでした。変身前のエルレインとしての彼女も気品や聡明さを持つ高貴な御方という印象でしたが、今のマジェスティより更に高潔さを感じさせる雰囲気や佇まいに目を奪われる。

次回は戦闘シーンもありそうですしキュアノーブルがどんな活躍を見せてくれるのか期待したい。カイゼリンとの間に起こったことを思うと、幸せや希望に満ちたものにはならなさそうなのが辛いところではあるが。

今回は冒頭からカイゼリン様に圧倒されていたし、物語の根幹に纏わる事情にも踏み込んでいて内容的にとても濃かったし、ともすれば重苦しい雰囲気に支配されてもおかしくない内容でしたが、過去に飛ばされた際のソラとましろの反応や、エルレイン相手に変身するところを見せようとして失敗し慌てふためくシーンなどを筆頭に、コミカルさも交えていていい塩梅で存在感を発揮してくれていた。

ひろプリも最終盤に突入してるし、物語全体の内容や展開的なことを考えてもね。この先こういった描写はどうしても限られてきそうなので。残り少なくなってきた日常パートやキャラ同士の楽しい掛け合いも余すところなく楽しんでいけたらいいな。