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ひろがるスカイ!プリキュア 第49話 「キュアスカイと最強の力」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第49話 「キュアスカイと最強の力」 感想

最強の力と相対したキュアスカイが指し示す答え。

力が全てを掲げるアンダーグ帝国、ひいてはアンダーグエナジーそのものの化身であったスキアヘッド改めダークヘッドの思想信条に対し、本作で掲げる理想のヒーロー像として、特別な力を有する圧倒的な個が一人で全てを背負い解決するわけではないということは折に触れて何度も描かれてきたことである。ひろプリの物語と本作のテーマを描く上で、この対立軸が基幹にあることは間違いない。

それを示すにあたり最終戦に至るまでのいわゆる「ここは私に任せて先へ行け」の王道展開を今作のテーマを改めて意識付ける流れに巧く組み込んでいて舌を巻く。スカイとプリズムを送り出す際にマジェスティが語った自分たちは何故五人なのかという自答も、ひろプリチームが体現するヒーロー像を際立たせるし、エルレインから受け継いだ意思を傷心のカイゼリンに届ける意味合いも生まれてより効果的に映り込む。

迫力のある作画に見応えあるバトル。声優陣の熱演も相まって非常に惹き込まれる作りでしたが、最高のパートナーであるましろ/プリズムをダークヘッドに人質に取られ、彼の甘言に惑わされるような流れの中で、アンダーグエナジーを取り込まされ、さながら闇落ち姿のようなインパクトある変貌を遂げながら、それでも自らの信念を貫き乗り越え包み込むスカイと彼女を支えるプリズムの格好良さが最高で。

清濁併せ呑むではないのですが、自分とは異なる主張をする相手を完全に切り捨てるのではなく、相手の主張する力を一度はその身に宿して体感した上で、それでも力が全てではないのだと身を以て示すことで、一方を力でねじ伏せる「力の暴力」の否定にも繋がるし、何よりアンダーグエナジーによって運命を弄ばれたカイゼリンの心に、本当の意味で寄り添うことが出来るのだと思います。

エルレインの意思を受け継いだ今のひろプリチームが、彼女の願いをカイゼリンに届けること。光と闇の両方の力に触れたキュアスカイが、同じく二つの力の間で揺れ動き翻弄されたカイゼリンの心に寄り添うこと。肉体の危機のみならず相手の心に寄り添い救ってこそのヒーローという理想像についても、これまで度々触れてきたことですが、今回の内容はそれを見事に体現する形となっていて感慨深い。

ひろプリチームとして心を繋ぎ意思を継いで力を合わせる総力戦。そして、ふたりはプリキュアとして始まったシリーズの記念作としてというわけではないが、ソラとましろの関係性に焦点を当てた上で、エルレインとカイゼリンが成すことの出来なかった理想の形を示すことで、可哀想な運命を辿ることになったカイゼリンの心に希望の光を灯す流れは堪らないものがある。

長きに渡ってたった一人で戦い続けたエルレインとカイゼリン。幼い頃にヒーローになることを志し、ましろ達と出会うまでは自分の歩む道や理想を共有できる仲間や友達がいなかったのはソラも同じ。そのソラがキュアスカイとなり出会った自分のヒーローとしての在り方を理解してくれる仲間と共に、プリキュアとして得た経験や成長を以てエルレインとカイゼリンの追い求めた悲願を成就する。

特別な力を持った一人のスーパーヒーローが全てを背負うのではなく、思いを同じくする仲間と共に困難に立ち向かうヒーローガールとしての理想形。「最強の力」すら跳ね除ける。ソラ/キュアスカイが辿り着いた到達点にして彼女が指し示した答え。主人公としてここぞの場面で魅せてくれるソラは、やはり我らが誇る素敵で無敵なヒーローガールでした。頼もしい!

悲しき思いのすれ違いや困難を乗り越えて迎える本当の最終決戦の果てに、どんな結末を見せてくれるのか。ひろプリのお話も遂に最終回。皆が幸せになれるような未来を信じて見届けたい。

アンダーグエナジーの入れ物として力を受け入れた闇落ちキュアスカイ。もといダークスカイとでも言うべき姿に変貌を遂げたスカイの姿も良いものがある。純真なイメージが強いソラだからこそ、反転した相反する属性を反映した姿も映えると言いますか。放送時間帯が深夜の作品だったら、ここでもう一波乱というかましろんに試練が訪れてもおかしくなさそうな展開だもの。

溢れる力のままに相手を屠るような。まさにねじ伏せるという言葉がピッタリ当て嵌まるようにダークヘッドを打ちのめすダークスカイの戦闘も見応え抜群で。そのソラに対して目を逸らすことなく正面から受け止めるプリズムの迫力もまた素晴らしいものがありました。ソラとましろが紡いだ絆。共に積み重ねてきた時間と心。ぽっと出のダークヘッドに付け入る隙などあろうはずもなかったのである。

ともあれ自分にもっと力があればと自らの力不足を嘆いたこともあるソラが。また、ましろが戦うことを最初は良しとはしなかったソラが、ましろに身を委ねて託す形で回帰したのも良いなと思えたところだし、脅威に対して毅然と立ち向かい「ふわり広がる優しい光」で全てを包み込んでくれたプリズムの強さが、ソラのみならずカイゼリンの傷も癒やしてくれたことが嬉しい。

おかえりとただいま。その一言で通じ合える二人のヒーローとしての姿が、在りし日のエルレインとカイゼリンが願ってやまないものだったのだと。そう思えるのです。やはり百合パワーが世界を救う。

皆を先へ行かせる為に残ることを告げたバタフライに対するウィングとのやり取りと、それに対するバタフライの反応も凄く良かったと思えたところです。あげツバの真骨頂というか。おねショタの一つの完成形をここに見た思いでいっぱい。少年もたくましく頼もしい存在へと成長を遂げている。最強のコンビとして立ちはだかる敵を迎撃する様や、その後のエルちゃんとのやり取りもまた味わい深いものがある。

最初は庇護対象で守られる存在だったプリンセス・エルでしたが、今では自分の意思をしっかりと仲間へ伝えて皆を守る側として立っている。ソラとましろだけでなく皆が仲間を信じて送り出し共に戦ってくれている。信じて託す。エルレインが人知れず願っていたこと。カイゼリンとそうなれたらと思っていたこと。それを今を戦う五人のヒーロー達が体現してくれてるのが本当に素晴らしい。やはりひろプリチームは五人で一つ。