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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第11話 「ミライノオワリ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第11話 「ミライノオワリ」 感想

未来を変えるために自分たちから始めよう!

人間の善悪と存在意義。のぞみ達とベルの論争は思想哲学的な問いかけを多分に孕んでいて絶対の正解はないかもしれない。この星や街にとって人間の存在は害悪以外の何者でもないという指摘も、ある一面においては正しいのだろう。自分勝手で他者がどうなろうと構わない。今の自分さえ良ければそれでいいとする者は、自覚のあるなし問わずに多数存在するのもまた事実。

その果てに人間が自ら築き上げてきた街や文明を崩壊させるのも因果応報。平穏な暮らしを求め希望に溢れる未来を夢見て街を築き上げたのが人間ならば滅ぼすのもまた人間。これは人間自身が引き起こした結果で責任は人間にあるというベルの主張も然り。しかし、人間が存在しなければ街を存続することも叶わないというベルからすれば矛盾を含んだ事実もまた然りなのである。

人間の善悪と同じように切り離そうとしても切り離せない。表裏一体でどちらが欠けても成立し得ない。この観点が非常に興味深く、また複雑で難しいテーマでもあると考えさせられる。人間は愚かだし過ちを繰り返す。当たり前に享受出来るものになると有り難みを感じることも忘れ、それがどれだけの人の思いと苦労の上に成り立つものであるのか。当初の願いがどんなものであったのか。

当事者でもなければなかなかそこに思いを馳せることも叶わない。さなえお婆ちゃんが語った街の成り立ちの話にもあったように。何もなくなった土地に人々が集い最初に願ったことは平和で希望に溢れる居場所を得ることで。それが少しずつ積み重なって街の形を成し今に至っている。一人ひとりの小さな願いや力の積み重ねの果てに皆が幸せを享受できる街の姿がここに在るわけで。

プリキュア達が守りたいと思った街。ベルが守りたいと思った街。それらは人々の確かな善意と小さな願いから始まっている。だからこそかつての人々がそうだったように。のぞみが言うようにこの街に生きる一人の人間として、自分たちから始めることが未来を変えるために何よりも大切なことなのだ。みんなが変えようと思えばきっと変えられるというのも、この愛すべき街が存在していることが何よりの証左となるのである。

始まりをもたらす力を生み出すのが人間ならば、終わりをもたらす力を生み出すのもまた人間。みんなが絶望に染まる中で、最初の希望の一歩を踏み出すのがドリームだったのも良かったし、それに連なる仲間たちの思いと力の繋がりが、初代の二人に結びついていく流れも人や街の成り立ちとプリキュアシリーズの成り立ちの重なりを感じられて気持ちよかったです。

守るべき人間を守ろうとするが故に滅びの未来が訪れる。その事実を前にした時の逡巡。プリキュアとベルが敵対しているようで本質的には同じものを求める表裏一体の関係性。そこに人間の善悪や存在意義を絡める構造的な見せ方が巧みでした。舞台装置としての街はミクロで小規模なものかもしれないが、テーマや題材的にはマクロで大局的な感じで。

特別な力を持ったプリキュアだから世界を救うというのとは少し異なり、あくまでもこの街に生きる一人の人間として問題に向き合っているというか。それが良し悪しは別としても、そこが本作が本作たる所以でもあるのかなと。残り1話でどのような決着を見せてくれるのか。2クールやると思い込んでいた自分の勘違いは置いておくとして最後がどうなるのか楽しみにしたい。

大局的に見れば確かに人間は学ばず過ちを繰り返す愚かな生き物である。しかし、一方で自らの行いを顧みて変わることが出来る生き物でもある。満と薫、そしてブンビーさん。かつてプリキュアと敵対関係にあった三人は、それぞれの事情を抱えていたとは言え人間世界の尺度からすると悪いことをした存在である。特に満と薫の二人は出自からして善悪を超越した存在であったと言っても過言ではない。

だからこそ、その人間から影響を受けて変わった彼女らの存在が、人もまた変われるという証にもなるのかなと。もちろん全ての人がそうではないとしても、妖精枠であるココナッツも交え、彼らが人間という生き物を異なる視点から語るからこそ意義が生まれるし、人間の善性と悪性の客観的知見も得られる。人間社会に大きな影響を与える存在となった満や薫、そこで働くブンビーさんもまた街の一部なのである。

それだけに最終戦においては彼らの見せ場も欲しいところです。この街で今を生きる一人の人間として。その思いと力を重ねて新たな希望と未来を切り開いて欲しいなと願わずにはいられない。しかし、あれですね。ブンビーさんはどんな時でも皆を和ませてくれて有り難い。かつてプリキュアと敵対した仲間として同属意識を発揮して盛り上がるブンビーさんは今回も愉快な男でありました。

もはや約束された勝利の助っ人参戦。なぎさとほのか、もといキュアブラックキュアホワイトが満を持しての本編登場!このキレッキレの戦闘描写からの立ち姿と言動と言ったらね。もう頼もしさしか感じないもの。プリキュアシリーズの礎を築いた全ての始まり。シリーズと今回のテーマでもある街の積み重なり。そういう意味においてはこのタイミングでの登場は絶妙だったと言えるのではないか。

もうこの二人が出てきた上に予告において登場が示唆されたシャイニールミナスまで揃い踏みとなれば、もう勝ち確定と言っても過言ではないが、前回も言ったように初代のあまりにも抜群の存在感と頼もしさ故に、この最終盤での登場にして全てを持っていきかねないのでは?という懸念もあるのです。あくまでオトナプリキュアをここまで牽引してきたのは5勢とSSの2人なので。

もう予告時点で最終戦のクオリティは凄いものになりそうなことは伝わって来てるし、シャイニールミナスやベルのプリキュア形態っぽいキャラのカットもあって魅せるところは魅せてくれそう。その中でのぞみ達と咲舞に見せ場を作り初代をどう活躍させて物語を収束に向かわせるのか。残り時間が限られてるだけに、要素を羅列しただけでもギュウギュウ詰めになりそうな感じもする。

その辺のバランスをどんな塩梅にしてストーリーを展開するのか。これは制作サイドの手腕が問われそうなところだと思うので楽しみにして待ちたい。しかし、やっぱりなぎほのの二人が出てくるとそれだけで盛り上がってしまいますな~。どれだけ歴史と時間を積み重ねても色褪せない存在感。流石としか言いようがない!