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ひろがるスカイ!プリキュア 第45話 「アンダーグ帝国の優しい少女」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第45話 「アンダーグ帝国の優しい少女」 感想

心優しき少女カイゼリンの勇気ある行動が未来の道筋を切り拓く。

力こそが全てを信条に掲げるアンダーグ帝国において、その思想を植え付けるが如き教育を施されながらも、誰よりも争いを嫌い平和を願う心を育んだ幼きカイゼリン様の慈愛に満ちた献身が光る。武力の強さではなく誰よりも強い心根の持ち主である彼女が、初めて出会った自分と志と思いを同じくするエルレインと、大切に思う父との怒りと憎しみの衝突を、身を挺して止めることで初めて双方の心が通じ合うのも良い。

心根の優しさや思想の違い。スカイランドとアンダーグ帝国は相容れぬ関係にあるかと思うところだが、カイゼリンを通して描かれた彼女らの姿は、むしろスカイランド側と相違ないものであった。力が全てで弱さは罪と考えるカイザーにしても、娘を大切に思う気持ちはハッキリと出していたし、侵攻を繰り返すのも力で劣ればいつかスカイランド王国側が攻め入ってくるといった強迫観念に駆られてのものでした。

それは心の弱さがもたらすもの。そして相手を真に見ようとはしなかったことが引き起こす悲しきすれ違いでもあって。プリキュアでありながらも一国の姫として、守るべき民を守るために怒りに呑まれたエルレイン/キュアノーブルにしても、差し迫った事態から生じる一種の強迫観念から一時とは言え力で物事を押し切り心を置き去りにしてしまいそうになっていた。

だからこそどんな事態に直面しても争いは涙しか生まないという自分の信条に則り、それを貫く幼きカイゼリン様の高潔さや本当の心根の優しさが際立つのです。たとえ二人と比べて力で劣ろうとも、あの場において一番強き者であったのはカイゼリン様だし、自らの危険を顧みず信念を貫く徹底した慈愛の精神が、新たな希望に繋がる未来への道筋を切り拓く力の原動力にもなっていた。

特別な力を持っていればそれで全てが解決するわけではない。そして、特別な力を持つ一人が全てを背負うのではなく、守りたいと願う多くの人々の共感や理解を得ることで、初めて世界を動かすほどの大きなエネルギーが生まれる。だからこそ力なき者に寄り添い、誰よりも平和を願う少女カイゼリンの純水で尊き願いが、両国の和平の流れを生むものとして多くの人に伝播していったのだと。

スカイランドに平和をもたらした伝説のプリキュアと伝わるエルレイン/キュアノーブルではなく、敵国の姫であったカイゼリンが、プリキュア以上にプリキュアのようなことをやり遂げたことが印象的でしたし、それだけにあの流れから何があろうと己の思いを貫いた心優しく純真なカイゼリン様が、何がどうなって今のように歪んだ姿に変貌してしまったのかが余計に気になる回でもありました。

ともあれ特別な力を持つヒーローが一人で全てを背負うのではないということは、本作がこれまで描き続けてきた題材でもあり、それと対極的な力が全てを掲げるアンダーグ帝国の思想を、他ならぬカイゼリンが身を以て否定することで、全ての始まりになるという話運びが秀逸。

あの後に紆余曲折を経て変わったカイゼリンを相手に、ソラ達が力ではなく心の部分に寄り添うことで、かつてのカイゼリンと同じように皆を救うような道を導き出せるのか。エルレインとカイゼリンの間に何が起こったのか気になりすぎるし、この先の展開が更に楽しみになりました。たとえご都合であろうと過去のこともひっくるめて全てを救ってくれたらいいな。頼むぜ今を戦うヒーローガール!

エルレインもカイゼリンも一国の姫に相応しく基本的に優しく聡明で気品に溢れた人物像なだけに、その彼女らが感情を爆発させる瞬間は、より戦列で印象深いシーンとして刻み込まれる。そして、かつてカイゼリン自身が否定していた怒りに呑まれて力を振るい争い合う愚かな行為を、他でもない彼女が体現する存在と成り果てていることが悲しいのです。

アンダーグ帝国においては異端とも言える思想。その自分の気持ちを初めて肯定し、同じ志や願いを持つ初めての理解者となってくれたエルレインと共に和平にまで漕ぎ着けたというのに。本当にこの二人の間に何があったのか。その全てを見届けてきたであろうスキアヘッドの真意と動向もまた気になるところです。大切な人を思い守りたい気持ちは同じなのに、こうも相容れない悲しき運命が辛い。

北斗神拳ならぬソラのスカイランド神拳が再び炸裂!某ケンシロウを彷彿とさせる迫真の表情とカットだったけど東映さん繋がりということでそこはね。序盤の頃に見せたそれより更に破壊力が増している感じもする技の冴え。力が全てではないはずだけど物理的なパワーが解決する問題もあるんだよという一例ということで。

スカイランドに伝わっているスカイランド神拳のはしりは他ならぬソラ自身だったりするのかもしれない。鶏が先か、卵が先か的な問題になるが。伝説や伝承が必ずしも正しいことを伝えているとは限らないことを示す一例になり得ることは…まぁないか。