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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第10話 「サイゴノヤクソク」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第10話 「サイゴノヤクソク」 感想

相対する互いの正しさのぶつかり合い。

正しい手順と自然な時間の流れを経てプリキュアの力を授かった当時とは異なり、歪な形での若返りを果たした上で本来ならあり得えないはずの力を行使する。そんな特別な力をなんの代償もなく得られるほど現実は甘くない。戦いに赴く精神や覚悟とはまた別の意味で自らの命を削るに等しい行為となったプリキュアへの変身。それに対しココやナッツが難色を示し反対するのも道理である。

しかし、当時とは事情の異なるそれらの危機的な要素が、同時にのぞみや咲たちが本質的な部分で変わっていないことを示すものにもなっていて興味深い。大切な人たちや自分たちの生まれ育った街を守りたい。その気持ちは今も当時と何ら変わることはないし、変身自体に危険性がなかった当時においても、プリキュアになる皆は相応の危険を覚悟の上で、自らの身を削る思いをしながら戦いに赴いていた。

そして、それは変身に難色を示したココやナッツにしても同じことで。戦いの意味合いは異なれども一国の王として、時に自分の思いに蓋をして身を削る思いをしながらパルミエ王国の国民と国を守る為に尽力している。大切な人や居場所を守りたい気持ちはのぞみ達もココ達も同じだし、敵対しているベルですら同じなのである。そして今回はこの相対する正しさを持つが故の衝突が随所に見受けられた。

大切な人や居場所を守りたい。のぞみ達と共に戦ってきたココナッツの二人だからこそ、彼女たちが自らの危険を顧みずプリキュアになろうとする気持ちも分かるし、のぞみ達の側も二人が自分のことを心配してるからこその発言だということを痛いほど理解出来る。どちらが間違っているのではなく、どちらの言い分も正しく己の信ずるところに準じているからこそのぶつかり合いなのだ。

満と薫、そしてベルが言及した人間の善悪や存在の意義に関しても同じことが言えると思います。世界には善い人間がいることは間違いないが、それと同じように自分のことしか考えず周りの迷惑を顧みないような人間がいるのも疑いようのない事実で。のぞみや咲たちのように自分の身を削ってでも周りを含めた自身の幸せを願うものがいる一方で、自分のことしか考えないような人種がいる。

だからといって後者のタイプが間違っているかと言われれば絶対そうだと言えないのが人間社会の現実なのです。理想を言えば周りのことを考えない迷惑人間なんてノーだし私自身もそういった手合いは大嫌い。しかし、自らの欲望や野心を追求するタイプの人間が、時に文明を発展させたり人間社会を大きく動かすエネルギーを放つことも事実で。故に両者は時にぶつかり合う。

一概にどちらが正しい、間違っているでは括れない現実がそこにはある。今回作中で描写された街の人間の身勝手さは、大勢を動かす程の物ではない小さなものかもしれない。でも、そういう人間がいるからこそ、我が身を削っても信念を貫くのぞみ達の善性もまた際立つし、中学生だった当時と違って決して綺麗なだけではない人間社会の闇や暗い部分。

それを身を以て知りながらもそう在ろうとする彼女らの決意と覚悟が光るのではないだろうか。しかし、それだけに大切な人や街を守ろうとするプリキュアと同じように、自らの信ずるところに従い自然と街を守りたい気持ちから相対するベルを否定することもまた難しい。どちらかが善でどちらかが悪。そう簡単に割り切れないところに本作の本作たる所以があるのかと思える次第。

どちらかが間違っているのではなく、どちらも正しいことを言ってる場合に自分の進むべき方向は、選ぶべき道は果たして。ベルとの対峙の行き着く先に、今を戦うオトナプリキュア達が導き出す答えが如何なるものになるか。盛大にフラグ立てをしたのぞみとココの約束が、良い意味でへし折られて幸せな未来を迎えられることを願ってやまない。

最大のピンチをキュアドリームに救われ、彼女からブンビーさんと呼ばれたことでドリーム推しになる我らがブンビーさんが可愛い。この立ち位置や反応は最早ヒロインのそれと言っても過言ではない。のぞみの決め台詞である「決定~!」も披露してくれたし完全にチームプリキュアの一員。ブンビーさんには本当に幸せになってもらいたい。

雪城邸に現れた謎の影!いや、もう誰がどう見ても大人になったなぎさとほのかの二人ですが、僅か一シーンの登場で全てを持っていきかねない存在感は流石と言ったところです。ただ、初代の二人がこのあとで戦闘に介入してしまうと、良くも悪くも本当に全てを持っていきかねないだけに、あくまでファンサービス的な仄めかしで終わるのかなと個人的には思っている。だが果たしてどうなるか。

大人になった二人が今なにをしているのかとか興味は尽きないし、今の私生活がどうなっているか見たい思いは当然あるのですが。ともあれ最後まで何があるか分からないし今後の展開と行く末を見守っていきたい。