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ひろがるスカイ!プリキュア 第48話 「守れヒーロー!みんなの街!」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第48話 「守れヒーロー!みんなの街!」 感想

大切なものを守る為に皆の力を結集し希望を成す光となる。

強大な力を持った特別な一人が全てを背負うのではなく、今まで守られる側だった人間も含めて全ての人が力を合わせて強大な難事に立ち向かう。これはプリンセス・エルレイン一人に頼り切っていたかつてのスカイランドの姿とは異なるものであり、ひいてはひろプリ全体のテーマにちなんだ本作ならではのヒーローの在り方を体現するものにもなっていた。

伝説のプリキュアと称されたエルレインから始まり、彼女が残した力によって生まれたエルちゃんがいて、そのエルちゃんが生み出したミラージュペンの力が加わることでプリキュアとなったソラ達がいて、彼女らに救われたスカイランドの住人や青の護衛隊、アンダーグ帝国の元幹部たちがいる。たった一人から始まったヒーローの力と可能性が、今こうして広がりを見せ手と手を取り合うことで一つの大きな力として結実している。

これは他者をねじ伏せる力。物理的な脅威となる意味での力が全てを掲げるカイゼリン達のそれとは性質を異にするものであり、対照的とも言える皆の力の結集で以て相対することは、心優しい少女だった頃にカイゼリン自身が言っていた「力が全てではなく弱い自分でも大切な人やものを守れること」を、変わり果てた彼女に対し今一度突きつけるものにもなっている。

また物理的、身体的な危機だけを救うのではなく、心に寄り添う理想のヒーロー像。その在り方も示してくれており、カイゼリンの心に光をもたらすに際して、ソラがその役を担うのではなく、ましろに委ねられているのもその表れの一つだと思うし、彼女らに救われた元敵幹部のカバトン、バッタモンダー、ミノトンとの共闘も、彼らの心が救われことと、前述のカイゼリンの言葉が間違っていなかったことを、現帝国に属していた者たちが改めて示してくれるものにもなっていたのも興味深いし熱い。

それだけにカイゼリンの心に一筋に希望の光が指したと思われた直後に、彼女にとって唯一の心の拠り所で支えとなっていたスキアヘッドが、満を持して本性を表すシーンの絶望感も際立つのだ。彼女にとっては自らの心を救う希望だったはずのものが、一転して絶望へと塗り替わってしまう残酷な現実。カイゼリンの心を折るという意味でこれ以上ない仕打ちと言える。

だからこそそれらに対峙して、さらなる絶望に突き落とされた彼女の心に寄り添い光をもたらすことが、本作のヒーローが理想のヒーロー像を示す何よりの証となる。エルレインから紡がれてきた今の形が。そして、長い間たった一人でもヒーローになることを諦めることなく、志しを貫いて今や思いを同じくする仲間を得たソラが築き上げた輪が。如何にしてカイゼリンの傷ついた心を救う「力」となるだろうか。

最前線で戦い続けるプリキュアのみならず、今まで彼女らに救われた人たちの力を結集して最終戦に参戦するのも個人的には好きな流れだし、かつて敵対していた幹部三人が、プリキュアの危機に駆けつけ共闘する展開も、王道中の王道でやっぱり熱くて何だかんだ盛り上がる。それだけに最後の最後でカイゼリンの心を最悪の形で傷つけるスキアヘッドの裏切りが効くわけですが。

願わくばカイゼリン様の心が救われ幸せになれるような結末を見たいし、今回は他の皆に見せ場を譲ったところもあるソラの主人公としての立ち居振る舞いと、ヒーローを志し続けた今の彼女ならではの答えを見せつけてもらいたい。最終決戦の後に訪れる未来がどんなものになるのか。ひろプリの物語も残り僅か。最後までしっかりと見届けていきたい。

前回の感想でもチラッと触れたけど、忠臣だと思われたスキアヘッドが真の黒幕という流れに入ってしまって複雑な思いは正直ある。スプラッシュスターのゴーヤーンのようにラスボス枠の腹心であるキャラが、実は陰から全てを操っていた諸悪の根源というパターンも前例がないわけではないが、彼の存在に心を救われていたカイゼリン様という紛れもない事実があるだけ余計に性質が悪いという。

力は全てというアンダーグ帝国の真理。そしてアンダーグエナジーの海から生まれた彼にとってそれは絶対の理であり、その思想に邁進する彼は悪い意味で一途であり、同時に自分本意な人間であるとも言える。自分の大切な他者の為に後天的に身に付け培った力を振るおうとするソラ達とは真逆の存在で、その対照性から鑑みても最終的に立ちはだかる存在として相応しい側面も確かに備えている。

でも、個人的にはやっぱりスキアヘッドには忠義の男で居続けて欲しかったわけですよ!彼もまたアンダーグエナジーによって歪められた被害者という一縷の望みを期待もしたけど、アンガーグエナジーから生まれた彼にとって先述した力は全ては何にも勝る優先事項で。その思想に反し和平という道を選んだカイザーも、既にあの時点でスキアヘッドが仕えるに値しないと断じられたということか…。

こうなってしまうとカイゼリンとスキアヘッドの両方が救われる道なんてないようにも思えるが、この状況を最終的にどうやって決着させるのか。それも注目点の一つ。

プリキュアのピンチに駆けつけるかつての敵幹部!王道中の王道展開であるけど王道故に熱いのです。何事も正々堂々と真正面からぶつかってきたソラのように、武人のような振る舞いをするようになったカバトンの姿も見応えあったし、卑怯な手段も厭わなかった彼が生粋の武人枠であったミノトンと、互いに全幅の信頼を寄せて背中合わせになって戦う姿は得も言われぬ感情が沸き起こってしまいます。

あとシャララ隊長とバッタモンダーの会話シーンも味わい深いものがありました。人の道にもとる極悪な所業の加害者と被害者の関係性でもある両者。もちろん全てがなかったことになるわけではないが、それでも軽口を叩き合いながら大切なものを守る為に力を合わせられる心の在りようと変化。他者を顧みることのなかったバッタモンダーが、他の皆を逃がすために率先して行動している事実。

力が全て、成果が全て。そんな帝国の中で生きてきた彼らが、今こうして手を取り合って力なき民衆を守るために行動している。力が全てではないし、弱いからと言って誰かの助けになれないわけでもない。ひろプリが掲げるヒーローとしての在り方。理想のヒーロー像が彼らの中にも浸透し、それを体現する存在となってくれたことがこんなにも嬉しいのです。

復讐に取り憑かれたカイゼリンに気圧されそうになる皆を奮い立たせ、皆に的確な指示を送りながら戦況を冷静に見渡し、自らも体を張って皆を守るプリキュアとして立ち続けてくれたキュアバタフライ/あげはの存在感も今回は際立っていたと思います。これぞまさに最年長の貫禄!頼れるお姉さんとしての役割を十二分に果たしてくれていて頼もしい。

ツバサとの掛け合いもやっぱり独特な良さがあるよなと改めて思わせてくれる一幕でした。お姉さんにとって少年はどこまでいっても少年だが、その成長した姿や彼の見据える夢を信じて託してくれる。最強の保育士に見守られているツバサくんが心底羨ましい。