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ひろがるスカイ!プリキュア 第50話 「無限にひろがる!わたしたちの世界!」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第50話 「無限にひろがる!わたしたちの世界!」 感想

無限に広がる明日へ向かって!ありがとうヒーローガール!

異なる世界の者同士が繋がり合い見える景色や可能性が無限に広がっていくことを感じられる最終回。ダイジャーグへと姿を変えたダークヘッドとの最終戦も、見応え抜群のキレキレの作画や動画演出が盛り上げてくれるし、その過程においてガイナ立ちを決めるプリズムや、皆の心を鼓舞して先導するソラの抜群の存在感等々。心身ともに成長した姿を各々が見せてくれていて感慨深いものがある。

その一方で派手で画的に見栄えのするところだけに留まらず、各キャラの心の機微や内面にフォーカスした作劇が非常に印象的な回でもありました。本作のヒーローは身体的な危機のみならず対象の心を救うところにこそ理想像を追い求めているという話は、これまでの感想でも何度も触れていたところですが、まさに本作が理想として掲げるヒーロー像を体現してくれていた。

心の強さという意味では先述したソラやましろの内面的な変化が毅然とした姿勢に表れているのも然り。窮地に陥ったダークヘッドが再びカイゼリンを利用しようとした際、彼女がその甘言を跳ね除け今の自分に寄り添い続けてくれたプリキュア達を拠り所とし、強い心の在り方を見せつけてくれたの然り。今までソラ達と心を紡いだソラシド市の住人、そして敵対していたアンダーグ帝国幹部の三人然り。

最初はソラが一人で志したヒーローの在り方。そんな彼女と時にぶつかり、その心に触れて時に影響を受け、時に救われてきた人々が、今こうして心を通わせ同じ志の元に集い、共闘することで一つの大きな力を生み出していたのも印象深い。心を繋げることで広がった世界と自らの可能性。互いに異なる出自を持つ者同士、異なる考え方や信念を持つ人々が、手を携え一つのことを成す意義深さを感じずにはいられない。

思うに本作ひろプリにおいて、シリーズ終盤で半ばお約束となっている強化フォームに類するパワーアップがなかったのも、単純な「力が全て」というアンダーグ帝国の信条に依らないこと。そして、本作で掲げる理想のヒーロー像が特別な力を持つ存在が一人で全てを背負うのではないことを示す為であり、更に20周年記念作として初代の二人のスタイルを踏襲する意味合いもあったのかもしれませんね。

そのように人の心に寄り添い、互いに異なる出自や異なる考え方や信念を持つ者同士が心を繋げ、その交流の輪を広げてきた本作だからこそ、エピローグにおけるプリキュア達の別れのシーンや、これから新たな形を築き上げていくことが窺えるアンダーグ帝国の変化も際立って映るのだろう。出自や考え方が違っても人の心は通じ合えるし相手の気持ちに寄り添うことも出来る。

エルレインとカイゼリンが願いながらも叶わなかったこと。それを彼女の意思を継いだ今を生きるプリキュア達と苦難を乗り越えたカイゼリン自身が身を以て示してくれたことが嬉しい。かつてのエルレインと同様に、たった一人の志志から全てが始まったソラの物語ではあるが、エルレインが辿った道とは異なり、ましろ達と出会ったことで大きく広がった彼女の世界と見る景色は、希望と未来の可能性が無限に広がるものに変化したのだから。

涙も交えた綺麗なお別れシーンではあったけど、それも相手と心が通じ合い相手の気持ちに寄り添えばこその素敵な反応。早すぎる翌朝の再会もさることながら、それぞれが次の目標を見出して歩き出そうとしていること。スカイランドに戻ったソラが歩むヒーローとしての道は、未だ半ばでありこれからも素敵な志を持つヒーローで在り続けることを。その心の輪を広げていくことが感じられて良い。

まさに心が晴れやかになる爽やかな終わり方でした。本当にチームの皆がいい子で相手の気持ちに寄り添える心優しい子ばかりだし、皆がそれぞれ努力家で自分のやりたいことに全力で向き合っていて素敵なチームだと改めて思えました。ソラちゃんの真っ直ぐさに心洗われていた一年。ありがとうひろがるスカイ!プリキュア。私の中でまた一つ大好きなプリキュア作品が刻み込まれたのです。

ひろプリチームのそれぞれのお別れシーンは、やっぱり分かっていても涙腺に来るものがあったし、美麗な作画が雰囲気や臨場感を更に引き立ててくれていて堪らない。ソラとましろ、あげはとツバサの鉄板コンビは言うに及ばず。その少し前のツバサとエルちゃんの会話も一年の時間経過の重みを感じられるものでしたし、茶目っ気たっぷりなエルちゃんの仕草も反則的な可愛さでしたし。プリンセスどこでそんなことを覚えたの!

そんなあざと可愛さの片鱗を見せてくれたエルちゃんも、ましろが感情を押し殺そうとしている様子を察してそれとなく促してくれていたり、ソラましのお別れを二人きりでさせる為に空気を読んだりしていて、あのエルちゃんも心身ともに、特に心の部分で成長したことが感じられて良いなと。

当初は一方的にやり込められるというか年上のあげはが少年のツバサを手玉に取るような間柄だった二人も、特に直近ではツバサの少年らしからぬ「反撃」を受けて、ハッとさせられるようなあげはの表情も増え、これもこれで良いなと思わされるのです。あげはのような格好いい大人になりたいというツバサの新たな目標は、少年の成長を見守ってきた最強の保育士的にもこれ以上のものはないだろうと。

そして努めて笑顔でいい子のままで別れの時を迎えようとしていたましろが、やはり堪えきれずに感情を溢れさせてしまうところと、そのましろの思いを受け止めながらも自分も強くて格好いいわけではないと知っているでしょうと互いに通じ合うソラましのやり取りがもう尊さマックスで最高でした。もうこの場面を見られただけでも今回満足と言っても過言ではない。

アンダーグ帝国側のその後の描写も素晴らしかったですね。かつては力が全ての思想に基づき、その力による恐怖で三幹部を縛り抑圧していたのだが、今は力ではなくそれぞれが自分の心に従った上でカイゼリン様に寄り添おうとしてくれている。バッタモンダーは相変わらず捻くれたところもあるけど、それもひっくるめて彼は彼なのだろう。

最初のライバルだったカバトンがソラの信条を表した台詞を引用しているのも感慨深いし、今のカイゼリン様が無邪気に笑う姿を見せてくれたのも素敵でした。それだけに惜しむらくはエルレイン様とカイゼリン様が、もう一度心を通わせる機会があったらなと。やむを得ないところではあるが、やはりそれを見たい思いは捨てきれない。

今年はまほプリ以来続いていた本編内での次作プリキュアとの交流シーンはなかったが、引き継ぎパート自体は今年も建材で、キュアワンダフルのお披露目とキュアスカイ&エルちゃんと会話する姿も見られて何よりでした。エルちゃんは何気に去年もスカイと一緒にキュアプレシャスとコメコメと交流してたので、その流れで今年も登場と相成ったのかな。

ソラとはまた違った意味合いで純粋というか純真な心根を持つキュアプレシャスと彼女を中心に繰り広げられる物語がどんなものになっていくのか。キュアスカイ、そしてひろプリチームが繋ぎ広げてくれた世界と可能性を受け継ぎ、もっともっと広げていってくれたら良いなと思わずにはいられない。わんだふるぷりきゅあ!も楽しみです。

今年というかこの一年も世界情勢が不安定だったり、国内でも年明け早々に能登地方の地震があったりして穏やかではいられないことも多かったのですが、プリキュアの放送という観点だけに絞ってみれば、久しぶりに休止とか中断という事態に陥ることなく、無事に一年を走り切ってくれた年になりました。それを楽しむことが出来る喜び。それにより幸せな気持ちに浸れることが如何にありがたいことかを噛みしめる次第です。

現実の世界には様々な危難や苦難を前に物語のように都合よく全てを解決してくれるスーパーヒーローなんて存在しないのかもしれません。先述した戦争や災害に際し、一人の力で全てのことを解決することなど到底叶わない。だからこそ傷ついた人たちの心に寄り添うこと。相手の気持ちに立って尊重し理解しようと務めること。手を取り合って一丸となることの意義を考えさせられるのではないだろうか。

故に本作ひろプリで描いてきた理想のヒーローとは何か?という問いかけ。そして、主人公のソラが志し、その身を以て示してきたテーマも身近なものとして捉えることも出来るのかもしれません。

ニ十周年記念作として映画でも大きな転機を迎えるような内容で、シリーズとしても根源的な問いかけが行われていた一年。その中にあってヒーローとは何かだけでなく、プリキュアとは何かという命題と向き合った一年は、個人的にも本当に色々と考えさせられる一年でした。そういう意味でもひろプリは私の中で決して忘れられないシリーズに連なる作品として刻まれました。ありがとうひろプリ!この根源的且つ原初の純粋な思い。決して忘れない!