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ひろがるスカイ!プリキュア 第38話 「大空を救え!浮き島のひみつ」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第38話 「大空を救え!浮き島のひみつ」 感想

僅かな勇気と挑戦する気概が既存の概念を打ち破る力になる。

スカイランドに伝わる空を行く者を導く光を放つハレバレジュエルに纏わる騒動と、誰も行ったことがないとされる浮島を舞台に繰り広げられた今回のお話。話には聞いていたけど実際に見たことがない物や未踏の領域に踏み込み切り開いていくプチ冒険譚。その中で描かれていた今回のテーマは、伝承に記され伝説として伝わっているからと言って、それが何かを成すことを諦める理由にはならないということだろうか。

伝統を重んじる精神性も大切なことだし、実話に基づいて語り継がれる伝説もあるだろう。しかし、華々しい伝承や伝説の裏にある見えない事情や、語られぬ人々の奮闘があることもまた事実。何が言いたいかというと伝承や伝説に記されてる部分が全てではなく、またそれらが何かの事象や結果をたった一つのものに確定付けるものではないということである。

実際にツバサ達が赴いた島では絶滅したと思われていた竜族が今もなお存在していたし、輝きを失わないとされていたハレバレジュエルの光にしても、人知れず労力を割いていた竜族達の奮闘があってのものだった。その竜族達の常識の根底とされていた伝承にしても、飛べなくなったことも彼らの決めつけによるものであったし、今の人々に受け容れられないと考えたのも思い込みによるものであった。

しかし、実際のところは伝説通りのものではなく。窮地に陥った彼らは自らの力で再び飛ぶことで可能性を広げたし、勇気を出して一歩を踏み出し島を出たことで交友の和を広げたわけで。伝説や伝承という既存の枠組みにある概念。それを彼らの意思によって覆し自らの可能性を拡張することに成功したのである。いつだって道を切り開くのは今を生きている意思ある者たち自身なのだ。

飛べない種族とされるプニバード族でありながら飛ぶことを諦めきれず、異なる世界で航空力学を学び可能性を切り開いたツバサが、似た境遇にあった竜族達の導き手になっていたのが良かったし、誰からも無理だとか無駄だとされていたことを成し遂げるべく、彼が今までやってきたことから生じる経験や学びが、しっかりと活かされて、皆の進む道を切り開く力として機能していたことが素敵であり素晴らしい。

伝説や伝承から生じた固定観念を覆す。正規キュアとしては初の男子プリキュアで異種族という立ち位置のツバサならではのテーマ性と言いますか。そんなツバサのこれまでの全てが凝縮され活かされていたような回でした。ほんの僅かな勇気と未知の可能性に挑戦する気概。それが新たな可能性を切り開き同時に新しい伝説を形作っていく礎となっていく。そういうものかもしれない。

伝説や伝承という括りで言うのならヒーローやプリキュアにしても同じことが言えるかもしれない。多くの人にとって彼ら彼女らは華々しい活躍の果てに人々を救う存在と認識されているかもしれず。その裏にどれだけの苦労や葛藤があって、時に傷つき倒れながらも立ち上がって目の前に迫る脅威に立ち向かう。そんな彼女らの心の在り方や実情に思いを馳せる者は殆どいないかもしれない。

自らと直接関わりがなければそれも無理からぬことである。しかし、たとえ伝説や伝承に語り継がれるような存在であっても、決して完全無欠の超人でもなければ人智を超越するような存在でもない。どこにでもいる楽しいことにはワクワクして辛く苦しいことがあれば傷つき倒れる。

そんな当たり前の人間なんだってことを風ゆりの木の葉で盛り上がるソラとエルちゃんの姿を。そして、スタミナ切れでヘロヘロになるましろんの姿を見て思った次第です。実態はこういうこともあるけど後の世にはスカイランド異世界の未来を守った偉大な救世主として語り継がれるかもしれなくて。伝説というものは案外そういうものなのだということを改めて思った今回のお話でした。