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ひろがるスカイ!プリキュア 第41話 「ましろと紋田の秋物語」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第41話 「ましろと紋田の秋物語」 感想

自分を見てくれる人が確かにいると感じることで変わる世界。

自己肯定感に乏しく自分の力に自信を持てない。今でこそ変化した部分もあるが、ましろとバッタモンダーの共通点にして根っこには似通っている部分があり、そういう意味で二人は似た者同士と言えるところがある。ただ、二人の違うところは自身を肯定し支えとなってくれる人が周りにいたか否かで。その差が今の二人の対照的とも言える在り方に如実に表れているように感じる。

それだけに対照的な今の二人のスタンス。物事の見方や捉え方。見えている世界の景色や見据える将来的な先行きの違いも、より鮮明に際立って見える。バッタモンダーの強すぎる自己肯定感や承認欲求。それらもアンダーグ帝国時代に周りの誰からも見向きもされず、相手にされない孤独感から生じたものであることも判明し、それが彼の攻撃的に他者に絡む姿勢。虚栄心と執着する性質に拍車をかけてしまった。

自分が何をやろうとも誰も認めてくれないし褒められることもない。空虚で満たされない自己肯定感。それが続くことで何事に対しても投げやりになり卑屈になっていく悪循環。自ずと下を向き狭まっていく視界と閉ざされていく世界。本作のテーマやプリキュア側とは対極にあるバッタモンダーと接することで、ましろの変化や彼女の成長をより感じられる構図にもなっていた。

ましろにしても最初から今のように前向きだったわけではない。自分に自信が持てなくて誰かと対峙したり自分の主張をするのも苦手なタイプだった。でも、ソラ達と出会い色々な経験や失敗に直面する中で、それでも前を向いて歩いてこれたのは、いつでも自分を見守り支えてくれる仲間たちがいたからで。だから彼女は顔を上げて周りを見渡すことが出来るし、自らの世界と可能性を広げる事も叶う。

絵本コンテストで落選してもへこたれることなく再挑戦を決意し、悩みながらも新作の制作に意欲的に取り組めるし、最初から強者や才覚に溢れる側でなかったからこそ、多角的な視点を持ちバッタモンダーの気持ちに寄り添えるのだと。自分の気持ちを伝えることが得意ではなかったましろが、そんな彼女だから色々な立場の人の目線に立って物事を見たり、気持ちを伝えることが出来る。

そうなってくれたことが感慨深い。人は他者に存在を肯定され認められることで初めて自己を確立することが出来る。ましろんが見てくれているという事実。それによって変わり始めるバッタモンダーの世界。無価値だと思っていた落ち葉や自分が、決してそうではなく必要な存在なのだと。自分にも出来ることがあるのだと。そう思えたなら自分自身も彼の見ている世界もきっと変わっていく。

過ぎていく季節の移ろいのように揺れ始めているバッタモンダーの心。自分を見てくれる人が確かにいると感じることで変わる世界。ましろんの気質や二人のこれまでの軌跡。登場当初からの変化。それらを上手い具合に絡めて繊細な心の変遷を描き出していた回でした。見方を変えれば自分も世界も変わり得る。今後のバッタモンダーの行く末が更に楽しみになったし、ましろんの危機に今度は彼が味方してくれるような展開も…。あるのなら見てみたい。

闇バイトだの窃盗だのといった事件が多発する昨今。お金がなく生活に困窮して苦しんでいても持っている特別な力を使ったり安易に強奪という手段に走ったりせず、全うに働いて頑張ってるカバトンやバッタモンダーの今の姿は何だかんだで素晴らしい。カバトンは着ぐるみを着た人と認識されてるのだろうか。

それはともかくとして例えアルバイト店員だったとしても、真面目に働いている彼らの仕事ぶりを、雇い主を始めとして多くの人が目撃している。見てくれているのですよね。この回でも思ったけどバッタモンダーに何より必要なことを、紋田として得ている最中と言いますか。自分が必要とされている。見てもらえている。既に手にしつつある求めるもの。それに彼が気づくことが出来たなら。きっと世界も自分も変わる。

見ようとしても見えにくい。何を考えているのか分からない。ここに至ってもなお謎多きアンダーグ帝国側の実情や最終的な目的。その中でもとりわけ感情に乏しく何を考えているのかイマイチ判然としなかったスキアヘッド。その彼が唐突に発した思わぬ台詞は、ソラの心を揺さぶりのと同時に視聴者にも驚きを与えてくれるものでありました。

どうしてこんなことをするのかというキュアスカイの問いかけ。愛するお方がそれを望むからというスキアヘッドの返し。愛する人の為に、大切な人を守る為に。物事や善悪の是非はともかくとして、大切な人の為に行動する理念は自分たちと同じではないのか。それを妨げ、また害することを悪とするならば、自分たちの側も正義ではなく悪になり得るのではないかと。

ソラの心に巡った逡巡、戸惑い。未熟な心。見方を変えれば世界は変わるはここにも掛かっていて、正義を掲げるヒーローの正義とは何か。善悪とは何かというヒーローを題材にする作品が避けては通れない至上命題。それに繋げる要素にしていたのも巧みな見せ方だったんじゃないかなと。無論スキアヘッドが油断を誘うために思いつきで言っただけの可能性もあるが、本当に愛に生きる男だったのなら見方もまた変わる。

予告から見える次回の内容も楽しみだが、アンダーグ帝国側の動きがどうなっていくのか。最終的にどういう決着を見るかも俄然楽しみになってきました。