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ひろがるスカイ!プリキュア 第35話 「助っ人ソラ!エースとヒーロー」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第35話 「助っ人ソラ!エースとヒーロー」 感想

プリキュアやきう回の始まりだ!

エース道はヒーロー道に通ずる。肘を負傷してしまった絶対エースの四宮たまきを擁する野球部との交流の中で、相手の心の支え救いをもたらすというヒーローの一面。迫りくる脅威から物理的な救済をもたらす人命救助とはまた異なる側面を見せてくれていたと思うし、何よりそれがソラ自身の挫折や経験に基づく説得力を伴うもので彼女の内面的精神的な成長を感じさせてくれるのが素敵である。

身命を賭し取り組んできたことが駄目だったときの絶望感や無力感。自分の存在価値が揺らぎ先を見通すことができなくなる恐怖。野球と全てが同じではないけど人生の全てを費やしてヒーローを目指し、それでも一度は心を折られ立ちはだかる現実から目を背け逃げ出したソラだからこそ、たまきに心の底から共感出来るし彼女の心に届く言葉を届けられる。

本作の理想のヒーロー像が一人で全てを背負うものではなく、また力のある者が力のない者を一方的に救うものではないことは、これまでの回で何度も何度も描かれ示されてきたことである。そこへ絶対エースが背負うべき重圧や責任との向き合い方と、ソラのそれを重ねて見せた上で、かつてのソラと同じく支え合う強さと相手を思いやる心で以て困難や壁に立ち向かっていく様が良かった。

たまきを彼女を献身的に支える扇かなめとの相関性。野球においても特別なコンビであるバッテリーの在り方は、ソラとましろのそれを否応なしに想起させられるし、突出した一人の力ではなくチーム全員で降りかかる困難に共に立ち向かい苦境を跳ね除けていく姿は、ひろプリチームのそれに通じる。チームスポーツである野球の特性と本作のテーマを上手く融和させていた回だったと思います。

野球を全く知らないところからスタートしたソラの純朴さだったり、持ち前の明るさや快活さが改めて際立つ一方で、決してそれだけではなく今まで色々なことを乗り越えてきたからこそ出せる重厚さと言いますか。強く逞しく見える彼女も決して全て一人で背負っているのではなく、色々な人に支えられて成り立っている。言葉だけでなく生き様を見せることで、ソラの内面性を掘り下げるのと同時にたまきへの訴求力を発揮していたのが上手い見せ方でした。

大切な仲間の為に頑張る姿は周りの人の心を鼓舞し、周囲の人からしても自分たちの為に頑張ってくれるその人が報われてほしい。力になってあげたいという思いを湧き上がらせる。どちらか一方だけでなく互いに支え合い共に立ち向かう関係性。やはり本作ひろプリの世界の根底にはこれがあるのだなと改めて思わされるプリキュア野球回でありました。

たまきに正体バレすることも厭わず変身に踏み切った我らがソラでしたが、これも今目の前で心が折れてしまいそうになっているたまきに対し、プリキュアという特別な力を持つ自分もあなたと何も変わらないんだということを。決して一人だけで戦っているのではなく、仲間と力を合わせて迫りくる脅威に立ち向かっているのだと、その身を以て見せるための一つの決意の表れ。

その心意気を示すためのものだったのかなと見返して思い至った次第。事が終わった後に自分がやったことを振り返って慌てふためくソラの姿は可愛らしかったが、今回はソラの素の反応とヒーローとして一回り大きくなった姿の二面性が、いつも以上に際立って見えていたように感じる。

力を合わせ支え合うこと。共に困難に立ち向かうこと。損得勘定などを度外視した心の在りようの重要性が描かれる中にあって、給料が出るわけでもないのに体を動かす意味が分かんねえとボヤくバッタモンダーさん。相変わらずの捻くれ具合ではありますが、そんな彼も何だかんだ言いつつ人間世界で生きていく為に真面目に働いている。

しかもアルバイト要員とは言え一人の力では決して大きなことは成し得ない工事現場の作業員として。彼もまた知らず知らずの内に力を合わせ何かを成すこと。今はその実感を得るための過程にいる最中という見方も出来るのかもしれない。紋田としての彼がストーリーの中で今後何を成す存在となるのか。引き続き注目したい。