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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第7話 「ウレイノカジツ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第7話 「ウレイノカジツ」 感想

どこまでも真っ直ぐなシロップの姿勢がうららの心に光と熱を灯す。

大人になってから陰のある表情を見せることも多かったうららですが、思い返すとのぞみと出会う前の最初期の頃も、芸能生活の影響で友達が一人もおらず自分で抱え込む傾向にある子でした。大人になってその性質が再燃したとまでは言わずとも、共にプリキュアとして戦い絆を育んだ仲間と会う機会が激減し、知らず知らずの内にその気質が蘇ってしまった側面もあったのかもしれない。

俳優や芸能という職業に限らず大人になるに連れて身についていく良識や常識。ああしなければいけない。こうしなければいけない。これはやっては駄目なのだ。大人として成熟したことを示すはずの在り方が、却って自らに課した制約の如く自らの可能性や行動力すら縛る鎖となってしまっていて。そして、良識ある大人で立場のある俳優だからこそ、昔のように安易に誰かを頼ったり弱音を吐くことを自分自身が許せない。

この現在の大人のうららの姿が、かつてのシロップと重なるものがあって。登場当初は記憶喪失で人でもなく他の妖精とも異なる自分が何者なのかも分からない。その状態で敵対勢力であるエターナルに良いように利用され疑心暗鬼に陥り、誰に頼ることも出来ず、自分の素直な気持ちも明かせず、本当にやりたいことも思うように行動に移せない。

あらゆる要因により縛られていたのが過去のシロップで。その呪縛を断ち切るキッカケを貰い、当時の彼女らに大切なことを教わった今の彼が、うららにそれを返してくれる形になっているのが非常に素敵で。かつてとは真逆で今のシロップは真っ直ぐ純粋で気持ちをダイレクトに伝えてくれるし、自分の興味のあることは何でもやってみて行動に移している。対照的なシロップとうららの姿がそこにはあるのです。

興味あるならやってみればいい。こうしてみたいと思ったらなら自分の思いを素直に伝えて協力や相談を仰ぎ、実現するよう働きかけてみるのもいい。何かをやってみたいという気持ちや衝動。そこに子供や大人の違いなどなく、その気持ちに上手く折り合いをつけられるか否かが、大人になってなお自分の可能性や幅を広げる人と、そうでない人とを分ける決定的な違いなのではないかと思うわけです。

うららのかつての代表曲『とびっきり!勇気の扉』とシロップの言葉に背中を押され、共同制作で作った新曲『夢でいっぱい』によって、勇気を貰い大人になった今も夢に向かって弾ける心持ちを再び得るのが心地良い。うららが出演する舞台『エンジェル』の設定も、うららとシロップの境遇、そしてプリキュアとして皆と紡いだ絆と当時と今の心境の変遷を踏襲する設定や構図になっていて見せ方も上手い。

インフルエンサーとして活躍する満や薫との接触によって更に広がる可能性。シロップの熱い気持ちに触れることで引き出されたうららの本音や迷う気持ち。繋がりがもたらす自己の拡張は当時のそれと同じであり、大人であろうとそうでなかろうと全てを一人で抱え込むのではなく、不安な気持ちを正直に打ち明け頼ることも時には必要なのだ。

こうしなければいけない。ああしなければいけない。成長の過程で身に付け自分が思う大人の在り方で、自分自身を全て縛っては本末転倒。鬱屈した感情を抱え込んだ状態よりも、やはり自分の気持ちに正直になり心の底から楽しんでいることが伝わる方が、周りで見ているものを惹き付ける。令和に蘇りし「はじけるレモンの香り!」。

その神髄とうららの感情がダイレクトに出た弾ける笑顔。堪能させて頂きました!公式デート回と言っても差し支えない程の予想以上のシロップとうららのやり取りが感慨深くて最高でした。特にシロップは中身も見た目も本当に男前で格好良くなったよ。素晴らしい。

はじけるレモンの香り!キュアレモネード!ということで令和になってもこの名乗り口上を聴くことが出来て嬉しい限り。芸能に携わる者として現代ならではの悪意に晒されながらも、それに怯む気持ちを断ち切って毅然と立ち向かうところに、また一つ覚悟が備わり前を向いたことが伝わってくるようです。

自分自身が己に科してしまった呪縛。自らの可能性を縛る鎖。それらを断ち切ることの意義については上述したとおりですが、こうしてみるとレモネードの浄化技であるプリズムチェーンにも意味が備わっているように写って興味深い。

煮え切らない曖昧な態度を取り続けるココに対するくるみとナッツの対応が味わい深い。ブンビーに対してダメ出ししてるかと思いきや、のぞみが隣の部屋に住んでいると分かるや否やウキウキで契約するくるみが好き。前にも書いたけど以前はむしろ敬愛するココ様にのぞみは相応しくない!と反対するスタンスだったのに、今では全力で二人の仲を後押ししてくれるんだもの。色んな意味で逞しく頼もしい。

ナッツも親友とのぞみのことを思えばこその無言の腹パンと苦言を呈していることは伝わってくるので。ナッツはナッツでこまちとどうなるのか気がかりではあるのだが、ともあれこちらも一人で抱え込む傾向にあるココを、こうして心の底から心配して気にかけてくれる仲間がいる。うららと同様にこれをキッカケにして新たな可能性を切り開くべくココにも頑張ってもらいたいものです。

あとブンビーさんは新規の契約を取れて本当に良かったよ。営業成績もとても大事なことなんだ。