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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第9話 「フタリノキズナ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第9話 「フタリノキズナ」 感想

いくつになっても向上心を持ち続けることは素敵なこと。

仕事や私生活が順調であっても、人が生きている以上、それぞれの悩みは尽きることなく。行動的で興味のあることには全力というスタンスが、当時の咲のイメージでしたが、大人になった今は自分の興味のあることだけに注力すればいいわけではなく。周りの人や自分が置かれた立場に思いを巡らせ、自らを抑制することが出来るようになったことは大人になった今の咲の一面と言える。

咲の言葉を借りれば大人になった責任。全ての人に当てはまるわけでないことは承知だが、やっぱり学生の頃は自分がやりたいと思ったことを、ある程度やらせてもらえる環境があるし、仮に失敗してもそれが自らを形作る得難い経験となる。人生設計という意味でもいくらでもリカバー出来るし、新たな道を模索する時間的・経済的な猶予もある。生活に困窮しておらず両親の理解もある日向家なら尚の事。

でも独り立ちして自分の身の振り方で周りの人の生活様式に影響を与えるとなれば話は変わる。店の跡継ぎ、婚約者との結婚を控えた身では、学生時代のように気ままに思ったように振る舞うことが憚られて。他の誰でもなく大人としての自覚と責任感を備えた咲自身がそれを許さず、自分の中にあるパン作りの研鑽の為に留学したいという素直な気持ちに蓋をして身動きが取れなくなってしまっていた。

成長するに連れて増えていくしがらみや立場。そこにプリキュアとしての使命も加われば、いよいよもって自由に動き回ることは叶わなくなる。プリキュアのことは置いておくとしても、咲が置かれた状況や直面している悩みが、現実の私達でも起こり得るものだからこそ、危機に直面してもプリキュアになることを躊躇い、戸惑う咲の心境も痛いほど理解できる。

それだけに悩める咲の気持ちに寄り添い背中を押してくれた親友の舞の優しさ。そして悩みを打ち明けた時の咲の両親や婚約者が示してくれた理解が身に沁みて伝わってくる。大人になったからといって全てを一人で背負い抱え込むことはないのです。助け合いや支え合いは人が人として生きていく上で不可欠のものであり、それは今も昔も変わることなき不変のものでもある。

大人になり立場やしがらみに縛られるプリキュアの面々と対照的に、自由奔放に振る舞い、思うまま気の向くままに自分たちの素直な気持ちを発信する今の満と薫は、それ故に象徴的な存在とも言える。生まれた瞬間から運命を宿命付けられた存在。自由は皆無で全てを束縛されていたのが、かつての彼女たちの在り方で、そこに疑問を挟む余地すらなかったのだから。

だからこそ咲が直面した問題を解消するに当たり、満と薫の二人がダークナイトライトとしてではなく、ありのままの満と薫として、咲と舞と再会し今の姿を二人に直接見せることに意義が生まれるのだと思います。そういう意味で二人の顔出しが解禁されたタイミングも絶妙だったなと思うし、何より皆の繋がりが生まれた大空の樹の前でこの四人が再び勢揃いしたことが感慨深い。

生きていく以上、悩みは尽きないし大人故に立ち止まることもある。でも、大人になっても常に向上心を持ち続け新しく何かに取り組むこと。実際に行動に移せることは凄いことだし、それを成す為のエネルギーを生み出すことが、生き甲斐を生み日々の生活をより鮮やかに彩り充実したものにしてくれるのだと咲を見ていて思えたのです。

自分の気持ちに寄り添い理解を示してくれる親友や家族、仲間がいる。仕事の順調さや私生活の充実もさることながら、そういう相手がいてくれること。それが何よりも幸せなことで日々の安寧をもたらしてくれるものだということを、咲、舞、満、薫。スプラッシュスター組の四人が示してくれたんじゃないかなと思います。生命や癒やしに重きを置いていた彼女たちならではのテーマ性だったのかもしれませんね。

この名乗り口上と決め台詞を令和になっても聞ける幸せ!ということでキュアブルームキュアイーグレットも満を持しての変身となり、懐かしさと嬉しさが込み上げてくる。変身に妖精が不可欠のタイプのスプラッシュスター組なので、フラッピとチョッピが不在の今、本当に変身するのかどうか未知数でしたが、懸念していた点は力技で解決ということで。まぁこれは仕方ない部分もある。

むしろ、その力技というか本来のスタイルや在り方とは異なる手法。因果律などを含め諸々を捻じ曲げることで、無理やり当時の力を再現しているところに、タイムフラワーの危険性という側面が結びついていくのかもしれない。本来ならあり得ない事象を引き起こしているわけで、無理やり若返った反動はやはり何らかの形で返ってくるのだと。

のぞみの不調が他の皆にも波及するのか否かも要注目。あと咲と舞は長いプリキュアシリーズの中でも唯一別フォームではなく完全な別形態。もう一つキュアブライトとキュアウィンディとしての姿を持つので、今後そちらの姿が本編で見られるかどうかも楽しみにしたい。ムープとフープに関しても、フラッピとチョッピがこうだったので問題はなくなったということで。

視聴者目線では初回から中の人が誰であるかバレバレだったけど、遂にダークナイトライトちゃんねるの二人の正体をプリキュアの皆も知ることに。咲と舞はもっと早く気づいても良かったかもしれないが、まぁ当時の二人のことを思うとまさか人気配信者でインフルエンサーになってるなんて夢にも思わなかったかもしれない。初回時は視聴者でもビックリしましたし。

スプラッシュスター時の彼女たちの生まれた理由と存在意義。そして、置かれていた環境や境遇を思うと、今こうして緑の郷=人間界の美しいものや楽しいこと。人が日々の忙しさから見落としてしまいそうな、普段忘れがちになりそうな世界の尊さを発信してること。それ自体が如何に尊いことなのか身に沁みて感じさせられてしまうのです。

ベルからしてもイレギュラーな存在である満と薫が、物語に確かな影響を与える存在として一定の立ち位置を確立してくれてることが嬉しい。くるみやかれんをも虜にする人気配信者。人とも妖精とも異なる視点を持つ二人の今後の活躍も非常に楽しみなところです。