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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第4話 「マヨイノツバサ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第4話 「マヨイノツバサ」 感想

大人になった咲舞の意外とも言える現状に驚かされる。

かつてプリキュアだった少女たちの大人になった今の姿。のぞみ達を通して今まで描かれてきたのは、主に仕事面やかつての夢や希望と今の現実とのギャップという観点に重きを置いていたと思うが、咲舞の二人を通して描かれた今回は、それらに触れながらも恋愛や婚約という色恋の問題。結婚によって生じる立場の変化や人間関係の変遷。それらに焦点を当てて描かれる咲舞の変化と今の姿。

とは言えオトナプリキュアにおいても妖精枠でのぞみ達と深い繋がりのあるココナッツと違って、本当に一般人の男性との恋愛とか婚約という要素を取り入れていたのが驚きといえば驚きで。勿論ハグプリの野乃はなのように本編のラストで出産シーンまで描かれて一児の母となった後輩もいるので、プリキュアシリーズにおいて恋愛や結婚が全て無縁のものではないし前例がないわけではない。

ただニチアサの本流の方では半ば禁じ手というかデリケートな扱いになりつつある要素を、こういった形で取り入れて大人になった今の姿を描き出すという手法は、非常に興味深いものがありましたし新鮮に映りました。周りの者が結婚して家庭を築き、出産するからといって必ずしも自分が迎合する必要はないし、自分がそうしたいと思えないことを無理に自分に強いることもない。

舞は周りの人と違って悩みがないことを悩んでいるとは咲の弁でしたが、舞の性格や性質を的確に把握している彼女ならではの助言だったと思う。中学生時代から学業優秀で何事もそつなくこなし、また観察力にも優れる舞は、物事の変化を敏感に感じ取り相手の心情を察して考えられるタイプであるのと同時に、繊細な気質で内向的な面もあった為に自分の内側に溜め込み落ち込み立ち止まることもある子だったので。

周囲の環境や人間関係の変化を敏感に感じ取って考え込む舞の姿を見て、大人になった今でも基本的な気質は変わっていないことが伝わってきたし、そんな舞だからこそ咲の助言を受けて自分らしく。今の自分に出来ることをやるという今の舞が出した結論に大きな意味が生まれる。そして、それを導き出し彼との関係に一区切り付ける決断が出来たのも、あの頃と変わらず舞の考えに寄り添い支えとなってくれる咲がいればこそなのだと。

のぞみ達とは違って仕事面では上手くいっているが、恋人として付き合うことになっても、必ずしもその先が希望に溢れた道のりになるわけでもない。そういう意味で前回までの視点とは別の切り口から大人の姿を描き出す回と言いますか。仕事とは異なる側面における人生の分岐点。その現実を前にして迷う舞の姿と当時と変わらず舞の道を照らしてくれる咲の姿が非常に印象的でした。

ブンビーさんの登場で話題を持っていかれるのではないかと危惧したけど、咲舞の二人の現状を描くにあたって恋愛観や婚約や出産などの概念を交えることで、それに負けず劣らずの存在感を放っていたのが流石でした。そこまで踏み込むんだ!というインパクトもあったし色々な意味で見応えのある回だったと思います。恋人や婚約云々には賛否両論あるかもしれませんが、そこは棲み分けということで。

あの美翔舞に付き合っている彼がいるというのも驚きでしたが、咲に婚約者がいてゴールイン間近という事実はもっと驚いたかもしれない。そのお相手が舞のお兄さんではなく、調理師学校の時に一緒だった人という生々しさも相まって余計に驚きが増した。いや、まぁ初恋は実らないというのも定説だけど、もしかしたら義理の姉妹になる咲舞をワンチャン期待してた自分もいたので。閑話休題

舞と違って公私に渡って絶好調なり~!な咲にしても、大人になるまでの間にどこかで舞のお兄さんに対する淡い思いが実らなかった瞬間があったんだなと妄想が広がる余地がありすぎて堪らんですね。そういう現実の壁や挫折を乗り越えてきたからこそ今の大人の咲がいて。そんな彼女だから頼もしくて相方である舞に対して大らかに心の余裕を持って接することが出来るのかもしれません。

ともあれ忙しくなって頻繁に会うことは難しくなった今も大親友で以心伝心な咲舞の姿を見ることが出来て感無量でした。咲さんのお相手には申し訳ないがやっぱり咲舞が結婚して幸せになるのがいいんじゃないかな、かな。

みんな大好きブンビーさんが満を持しての本編登場!かつての宿敵であるプリキュアと同じ席に座ってお酒を飲み交わし、社会と大人になることの大変さを説くブンビーさんの味わい深さたるや。今ののぞみ達や咲舞が直面している現実の壁や自分の思い通りならない挫折の苦しさを、当時これでもかと味わっていたブンビーさんだからこそ説得力が伴って響いてくる。

この人間味に溢れる立ち居振る舞いが魅力的な部分であり、何だかんだ憎めないからこそ今でも多くの人に愛され大人気なキャラであることを改めて実感させてくれる。同時にともすれば重く湿っぽくなりそうなストーリーラインをカラッとした雰囲気で満たし潤してくれる。そんな一服の清涼剤的な役割を果たしてくれていて本当に有り難い存在だと噛み締めています。

久しぶりに飛んで「そういや俺飛べたんだよな~!」という台詞も、くるみと同じくこちらの世界に順応して長い時間を過ごしてきたことを想起させるもので。確かな時間経過があるからこそ自然と口に出た言葉として印象深い台詞でした。あの場に居合わせた我らがブンビーさん。本人は金輪際関わらんと豪語してるけど、間違いなくチームプリキュアの一員として活躍してくれることだろう。何よりもそれを期待したい。