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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第5話 「ノゾミノノゾミ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第5話 「ノゾミノノゾミ」 感想

立場に伴い生じる重圧や葛藤、責任感が時に己の意思や行動を縛る鎖となる。

互いに会いたい気持ちを抑えて責務を果たそうとするココとのぞみの胸中に渦巻く葛藤。本当はこうしたいのに立場がそれを許さず我慢を強いられるもどかしさ。自分の気持ちに蓋をして己を律し、平静に務めることが大人になるということかもしれない。いつまでも己の衝動の赴くままに動くだけでは無責任だし、感情をある程度は抑制できないと社会の中では生きられないし、全ての人がそうなれば社会秩序すら崩壊してしまう。

プリキュアだからシャドウ問題に対処しなければいけないのか。それって本当に自分たちのやること?と疑問を呈するりんの問いかけも、立場によって生じる責任感の点を指摘してくれている。のぞみと直接対峙したベルの問いかけや彼女の語る目的にしても、その点を突いてくるし、立場ある大人として振る舞うココのぞの前に立ちはだかる色々な意味での障害を揺さぶってくるものでもありました。

自分を律し時に我慢することが大人としての在るべき姿。それもある時においては正しいのだろうが、いついかなる時でもそうあるべきではないし、大人であろうと感情を持つ一人の人間である以上、そんなことばかりしていては疲弊し壊れてしまいかねない。だからこそ時には己の気持ちに正直になり、思うままに行動することが正しい時もある。

大人だから出来る限り責務は全うすべきと考える気持ちも分かるし、子供の頃だったから程度の差はあれ衝動的で無責任な行動も多少は許容される。そういう見方をされることもあるし、大人と子供の違いというか両者を分ける境界線を、そこに見出す人もいるだろう。しかし、子供だからと言って無責任が全て許されるわけではないし、自分が果たすべき責任を全うしようとする子だって沢山いる。

他ならぬかつてののぞみ達だってそうだったように。もちろん全てにおいてそうだったかと言えばそうではないし、勉強を嫌がって逃げたり苦手なことから目を背けたり。そういう誰にでもありそうな一時的な責任の放棄というのは当然あった。それでも自分の気持ちと必死に向き合い、それを大事に育み一つずつ取り組んでいく過程を経て今の大人なココとのぞみがいるのである。

要は自分に課した責務を全うすることに大人や子供の区別はなく、同時に自分の気持ちに準ずることにも両者の間に大きな違いはないのではないかと。無論一国の王としてココが背負う重圧や責任は並大抵のものではないし、それによって自分本意なことを容易に出来ない立場であることも事実なのだが、だからこそ「出会ってから一日たりとものぞみを想わなかった日はない」という心の叫びに重みが伴うし、それを受けて涙を堪えきれなくなり感情が溢れるのぞみの反応も際立つ。

互いに己を律してきた二人がそれぞれ見せてくれた反応が、それらを雄弁に物語ってくれていたし、大人になっても見せ方が変わっただけで芯にある部分は変わっていない。大切にすべき人と、その人に向ける思いが揺らいでいないことを、これでもかというくらい訴えかけてくれていたのではないかと感じる。葛藤や重圧と向き合い、それらを跳ね除けて自分を縛る鎖を断ち切り可能性を切り開く。

そこは当時と大人になった今とで変わることはないのだと。大人になったココのぞの関係性。環境や立場に縛られた二人の立場を活かした話運びであったと感じました。のぞみはココに支えられ、ココはのぞみに支えられている。ココのぞの運命の再会もさることながら、他と一線を画する強い結びつきのある二人の姿をまた見られて感無量です。ココのぞを存分に浴びた喜び。やはり格別である。

ココとのぞみ。それぞれの立場から生じる重圧や責任による抑圧された現状が描かれていただけに、ダークナイトライトちゃんねるの動画配信者として、自分のやりたいことや興味のあることに忠実に動き、思いのまま気の向くままに振る舞う満と薫の自由奔放さが際立っていたと思う。

今は責任感とは無縁の楽しく愉快な配信者をやってる感じすらある二人だが、スプラッシュスター本編での彼女らの出生と生い立ち。絶対服従の強制下にあった当時の環境における諸々を思い返すと、人間社会に溶け込み大人になるに連れて、咲舞やのぞみ達とは逆に自由を得て解放されていったと見ることも出来る。そう思うと二人の今の在り方や奔放さに対する感慨深さも増すというもので。

くるみやブンビーさん程に社会に溶け込めているかは疑問符が付くかもしれないが、二人の生い立ちからくるズレた感性が受けていて、それが彼女らの生きる力となり、多くの人に希望と活力を与えるものになっているのも嬉しい。相変わらずのボケボケぶりも健在。謎の配信者としてだけではなく、満と薫として本編に登場し今の咲舞と再会する姿も見てみたいですな~。

オトナになった今だけでなく当時からチーム随一の責任感の強さを備えていたナッツも良い意味で変わってなくて安心する。パルミエ王国崩壊のキッカケを作ったとして一人で責任を抱え込み、頑なな面もあった当時のナッツであったが、そこから王国が復活して長い時間が経過し、周りが大人になったことも相まってなのか。本人は変わってなくても凄く柔らかくなった印象を抱かせてくれる。

国王としての重圧を背負いながら働きづめのココのことを案じる友達思いな一面。大恩あるのぞみ達への思い入れの深さと平和な世界を願う心優しく穏やかな性格。豆大福をこよなく愛する姿も合わせて心のオアシスとして皆を包み込んでくれるかのような温かさを感じさせてくれた。

あとは今後のこまちとの関係性というか関わり方が気になるところで。今はスランプ状態にあるこまちを奮起させる役割というか。やはりナッツの監修と添削。厳しく鋭くそれでいて温かみのある意見が、今のこまちには必要なのかなと思えるだけに。ココのぞと同じくらいナツこまも気になるし、こまちさんメイン回がどうなるのかも今から楽しみ。