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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第1話 「ミライノカタチ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第1話 「ミライノカタチ」 感想

プリキュアだった時って出来ないことなんてないと思ってた。

今まで一個人で妄想することしか出来なかったプリキュア達のその後の物語。大人になった姿というものを公式で描いてくれることが何よりも嬉しい。元は女児向け王道コンテンツの主要キャラを大人化させるというのは、非常にデリケートで難しいものがあると思うけど、大人になったからこそ直視しなければならない現実や苦難から目を逸らすことなく向き合う気概は初回から伝わってきた。

ニチアサ枠のプリキュアでも時折重たいテーマに基づく話を扱うことはある。ただ今回のオトナプリキュアで描かれたものは、より生々しさを伴うもので我々の日々の生活に直結する要素で構成されている。それ故に突き刺さるものがあるし、かつてプリキュアとして特別な力を持ち、夢を信じて様々な苦難を打ち破ってきたのぞみ達が、どうにもならない現実を前に苦悩する姿に共感してしまう。

当時とは異なり自身の社会的立場やしがらみによって生じるままならぬ事態。夢や希望を信じ邁進するだけではどうにもならない現実。大人として自分の発言や行動に責任が伴うことの重み。子どもではなく大人だからこそ向けられる周囲の反応。軽々しく口にすることは出来なくなった夢や希望という言葉。鬱屈としたとまではいかないにしても、どこか閉塞感が漂い先行きに対して漠然感じる不安な気持ち。

記事冒頭にも書いたのぞみの台詞や、頑張ったからと言って必ずしも報われるとは限らないというりんの台詞も印象的だったけど、夢を叶えた先にある新たなる問題。その立場になったから始めて気がつき見えるようになった諸問題。立ちはだかる現実という点に凄く意識を持っていかれる要素で満たされていたと思う。なりたい自分になれたからといって全てが上手くいくわけではなく。

夢を叶えた先にも次々に問題は降り掛かるし、全てが希望に満ちた人生になるわけではない。その時々で誰しもが色々な問題を抱えながらも必死になって今を生きているのだという当たり前のことを、かつてのプリキュア5の面々の大人の姿を通して改めて突きつけられた。それはのぞみやりんだけでなく、久々の再会となったうらら、こまち、かれん、くるみにしても言えることなのだろう。

だからといって終始重苦しいのかと言ったら決してそうではなく。そういう様々な問題に直面し、厳しい現実を突きつけられても、やはり我らがのぞみは立ち上がって前を向き、かつてココに教えられたように夢や希望が持つ力の凄さを。それを叶えようと頑張ることの素晴らしさや意義を伝えてくれているし、久々の再会に際してやはりのぞみが全ての起点となり様々なものが動き始めることを予感させてくれる。

オトナプリキュアは本流のプリキュアに対する一種のアンチテーゼ的な内容を含んでいる側面もあるかもしれないが、それでもやはりプリキュアの一角に連なる作品であると感じたし、いつもと一風変わっている作風だからこそ今はプリキュアを見なくなった人にも見てもらいたい。

何が来てもおかしくないし、大人の姿での変身はあるのかとか、往年の名キャラクターが本編に出てきて活躍することはあるのかとか。気になるところや見どころは本当に多いと思う。個人的にもこの姿ののぞみ達の物語を毎週楽しめることにワクワクせざるを得ません。オトナになった皆の物語。噛み締めていきたい。

皆が揃ったところでの決め台詞の「決定~!」を口にしたことで、久々に会った皆が一気に当時の感覚に立ち返れたような。そんな空気にしてくれるのが流石だなと思える。それにしても皆が夢を叶えて大人の姿になったけどやっぱり芯の部分は変わってなくて。個人的にはくるみがどうしてこちらの世界に人間として残ったのか。今までどのような道を歩んできたのかが非常に気になる。そこのところの掘り下げあるといいな。

あとは皆が当然のように化粧をしたりお酒を飲んでる姿を見ると感慨深さが込み上げてくる。本作と直接の関係性は全くないが、アイカツ10th storyでも成長した主要キャラがお酒を酌み交わすシーンがあって時間経過がもたらす大人の姿。女児向けアニメ初の主人公たちの成長を実感する一つの要素として刻み込まれたのであります。この両作が同じ年に生まれた奇跡に感謝。乾杯。

複数作品の主要キャラが揃い踏みで、尚且つ大人になるということで、時間経過がもたらす変化はかつてプリキュアだった者以外にも等しく生じている。歴代シリーズを見てる人なら気付ける細かい仕掛けやファンサービス要素が色々なところにあって、今でも彼女らがこの世界に息づいていることを感じられて嬉しくなる。

まさかの人気配信者になっていた満と薫のダークナイトライトチャンネルだったり。初回には出てこなかった咲舞の同級生の健太と優子が、のぞみ達の行きつけの店の店主になってて結婚して子どもまでいることを伺わせたり。プリキュア達の家族や友人のその後がどこまで描かれるのかという意味でも、本作は色々な描き方や絡ませ方が出来るポテンシャルを秘めているのだなと。

あとはOPのカットによってほぼ登場が確定したと言ってもいいみんな大好きブンビーさんが、どのタイミングで登場してどんな活躍を見せてくれるのか。ここはやはり大いに期待したい。かつてナイトメアやエターナルに属し、様々なしがらみや悩みを抱えながら敵対した彼に対し、今ののぞみ達が何を思い何を感じるのか。そういうところも見てみたいなぁ。