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キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第6話 「ホノオノユラギ」 感想

キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~ 第6話 「ホノオノユラギ」 感想

不安な気持ちを正直に打ち明け頼ることも時には必要なのだ。

プリキュアだったあの頃は周りに対する気遣いが出来て、その胸の内から溢れ出る程の情熱と、持ち前の面倒見の良さ。何事にも全力で取り組む姿勢でで以て周囲を鼓舞し勇気付けてくれる。そんなチームの皆を支える縁の下の力持ち的な役割を果たしてくれていた我らが夏木りん。強くて格好良くて頼りになる。りんのイメージはそういう強い女性像を体現するような印象が今なお根強く残っている。

そんなりんが大人になった今、現実という名の壁にぶち当たるに当たって弱音を吐いたり、自信を持てずに気後れして後ずさるような姿を見せているのが非常に印象的でした。当時はプリキュアや学業と両立していたフットサルの誘いを断り、今はもうプリキュアではないけど使命や私生活よりも仕事を優先し、ともすれば私情に走るかのような判断をして悔恨の念を抱き罪悪感に苛まれる姿など。

市民を守る警察官でもなければ給料が支払われるわけでもない。まして、それをやったからといって社会的評価を得られるわけでもない。りんの選択は大人としては至極当然のものであるし、見て見ぬふりをして言い訳を並べることで、自らを納得させるのも大人になるということなのかもしれない。仕事や私生活で上手くいかず精神的に弱っている今ならなおのこと。

でも、それはやはり当時のりんとは真逆のものであり、かつてあったはずの情熱と共に失われてしまったものでもあるのだ。大人になったことで生じる責任感。学業などとは異なりジュエリーデザイナーという職業柄故に、相談も難しく自らの力で成し遂げなければいけない重圧。その上でプリキュアとして復活し苦しんでる人や困ってる人を見過ごせない。

かつてと変わらぬのぞみ達の輝きを見せつけられ、それに比して色褪せている自分の現状から来る後ろめたさ。ともすれば目を背けたくなる現実。それらが複合的に絡み合い思考の堂々巡りに陥ることで、りんに二の足を踏ませる状況が出来上がり、彼女が一人で全てを抱え込んでしまう要因となってしまっている。それを打破するキッカケをかれんがくれるのが素敵でした。

一人で全てを抱え込む。心の迷路に囚われ行き先を見失う。今のりんの状況はテレビシリーズ本編最初期のかれんに見られた傾向でもある。だからこそ大人になった今、そのかれんがりんに対して道標となってくれることに意義が生まれる。当時から価値観や考え方の相違から喧嘩することも多く、意見をぶつけ合うことで絆を深めてきた二人だから素直に意見を吐露することも出来るのではないかと。

あのかれんが他人を頼ることの大切さを、りん相手に説くというのも尊いものがあるし、大空の樹の前でそれが行われたというのも感慨深い。スプラッシュスターにとっては全ての始まりにして再会の地。そして最後までプリキュアたちの戦いと成長を見守ってくれた大空の樹。だからりんがかつての情熱という名の自分と再会して取り戻すに相応しい場所と言える。

りんも当時はプリキュアとしてチームの皆を鼓舞し、家族の中では長女として年の離れた妹と弟を見守る立ち位置。お化け関連を除けば簡単には弱音を吐かなかった彼女が、弱音を吐く姿を見られたのは印象的で。それだけに以前とは逆の立ち位置から年上のかれんに見守られる形で言葉を返されるのも嬉しかったし、言葉や気持ちを受け容れる二人の掛け合い。その言葉の一つ一つが染み込んできて良いシーンになっていました。

オトナプリキュアにおいては開始から陰をまとった表情を見せることも多かったりんですが、キュアルージュとして再び覚醒し、安堵した表情と余裕を感じられるメッセージを送るくらいに吹っ切れた姿を見られて安心しました。陰りを見せていた情熱が再燃し快活で頼れる姉貴分のようなりんが戻ってきてくれたなら。これほど心強い存在もない。今後の立ち回りと活躍にも期待大なのです。

上述したけど今回のりんの姿が在りし日のかれんに重なって見えるところがあっただけにですね。モチーフにして鍵となる蝶がりんの手に止まった際に、かれんが初めてプリキュアになろうとして失敗したときのことが頭をよぎってしまって。りんも変身に失敗するんじゃないかと一瞬危惧したけど、杞憂に終わったのでそこは安心したところです。無事に変身出来て本当に良かった。

見ているようで肝心なところが見えていない。自分の気持ちを押し殺し見て見ぬふりをすることが大人の対応なのか否か。それはココのぞの関係においても言えることなのかもしれません。実はあれからも定期的にのぞみの様子を見に来ていたココでしたが、のぞみにそれを伝えることはなく、また彼女が教師になる夢を叶えたところを見届けた時点で、互いの立場から身を引くことが正しいと己に言い聞かせていて。

もちろん一国の王なので口で言うほど簡単な道ではない。ないがそれをのぞみに何一つ相談することもなく、一方的に決めてしまうのは大人の対応という名の我儘とも取れるかもしれない。前回ベルに囚われた際に垣間見えたのぞみの本音。何故会いに来てくれないのか。本当に大切なら一度くらい顔を見せに来てくれてもいいのではないか。これもまた偽らざるのぞみの本心であり心からの願いなのだ。

のぞみの十数年はココに思いを囚われたままであり、本当にのぞみの為を思い彼女と共にいる道を選ばないのであれば、それをハッキリ伝えることが真に彼女の為になることであり、未来への道を歩みだす一歩になると考えることも出来てしまう。かつてのりんとかれんではないけど、今のココとのぞみに必要なのは自分の気持ちに素直になって本音をぶつけ合うこと。

大人の対応ではなく心に準ずることなのではないかと思えたココの心情吐露のシーンでした。一方でオトナになってからココのぞの関係性を後押しして応援してくれてるくるみは良い意味で変わったなと改めて感じる次第です。当時はむしろココのぞの関係進展を妨害してココ様にのぞみは相応しくない!というスタンスを取っていたけども。

真に主を思うのであれば主の間違いを正し導くことこそが従者の在るべき理想の姿。本懐とも言える。そういう意味で今のくるみの変化は彼女の確かな内面的成長と捉えることが出来る気がします。