密やかに伸びやかに

アニメ、PCゲーム、PC関連のニッチな備忘録

トロピカル~ジュ!プリキュア 第38話 「決めろ!あすかの友情スマッシュ!」 感想

トロピカル~ジュ!プリキュア 第38話 「決めろ!あすかの友情スマッシュ!」 感想

ネットを挟んで感情をぶつけ合うのあすかと百合子の迸る思いが熱い!

執着と未練を乗り越えた先に広がる新たな未来と関係性。ということで今回はあすか先輩の進路と彼女にとっては切っても切れない因縁で結ばれた白鳥百合子との止まっていた間柄に進展が見られる回でした。過去の経緯から関係性が膠着し諍いも絶えず身動きが取れなくなってしまっていた二人。でも、それも全ては相手に対する執着と思い入れが未だにあることの何よりの表れと言える。

執着と未練。現役を退いてもなおラケットやウェアを処分できず、実力を落とさないよう密かに練習を続けていたあすかの行為もその表れならば、あすかに対して挑発めいた言動を繰り返しつつ、自分への意識とテニスに対する思いを断ち切れぬよう留めようとしていた百合子の素直になれない立ち居振る舞いもその表れではないかと今回を見た後だから思えます。

あすかとずっと一緒にテニスがしたかった。自分は学力で一般入試を突破できるからと推薦枠をあすかに譲ってでも高校で一緒にテニスがしたいと百合子が思いの丈をぶちまける大胆な告白は、彼女の素直な気持ちがようやく表れたところでもあり、それが発露した清々しさとあすかに向ける百合子の感情の重さが心地よくもあったのです。

しかし、それも二人が仲違いするきっかけになったあの事件についての悔恨の念というか。今にして思えば仲違いが決定的となったあの瞬間、棄権という形で不要な衝突を避けるべく問題を先送りした百合子と、あのとき一緒に闘って欲しかったと願うあすかの関係性は、先送り=後回しにする側と一緒に戦う=今一番大事なことを全力でという構図に分かれてしまっていたんだなぁと。

かつてはあった仲睦まじい関係。今は失われてしまったものを繋ぎ止め取り戻そうとする姿は、二人の未来を見据えているようでいてその実は過去に引っ張られる形で後ろ向きな気持ちを抱え現在を生きていることに他ならない。百合子があすかに求める今のそれは、ある種の後回しでもあるわけで。

自分との試合の継続とトロピカる部の仲間とプリキュアとしての使命。それらを天秤にかけて自分を選ぶよう迫る百合子より後者を選んだあすかの選択そのものが、過去に囚われるのではなく現在を。その延長にある未来を前向きに見据えていることの証左にもなっていたと思います。トロピカる部で培った経験や育まれた感性。まなつ達と共に過ごす中で得た知見。

それらがあすかの中で今一番大事なことは何かを選ばせる覚悟を養い、百合子のそれと対照的に映るものとして描かれていて見せ方が素晴らしいなと感じた次第。あすかが求めたのはかつての関係の修復ではなく、しがらみや諍いにより凝り固まった今の膠着状態を乗り越えた先に新たに築き上げていく二人の未来。その二人の心情と関係性の精算に進路と本作のテーマを重ねていたのが見事でした。

元よりスポーツ推薦ではなく一般入試でフェニックス学院に入ろうとしていたあすか先輩。最後の覚悟、その一歩を踏み出せずにいたのも過去に囚われていたからこそであり、百合子との関係と自分の気持ちに区切りをつけ、後ろ向きな気持ちを断つことで今を全力で頑張れるのだと思います。先延ばしや後回しにするのではなく今を全力で!その先に互いに前向きな気持ちであすゆりの二人が再び向き合える日が来ることを願ってやまないのである。

大胆な告白は女の子の特権!ということでテニスの試合もそこそこに互いの感情と本音をストレートにぶつけあうね。あすかと百合子の気持ちの応酬が心地よく響いてきたのです。ここぞの場面でスポ根ものにありそうな線が太めのタッチを入れてきたのもあってインパクトも印象値も抜群のものがありました。試合そっちのけでイチャついていたとも取れるような…うむ、それはそれでいい!

お互いの弱みや恥ずかしいことを暴露し合えるような間柄なのも、付き合いが長く互いのことを知り尽くせばこそ可能な芸当。一見するとクールな外見で冷静なイメージを与える二人も、胸の内にはとても熱い情熱を秘めている。何だかんだで似た者同士な二人の相性の良さを改めて痛感させられたのです。

あすゆりの感情が迸るこの熱い百合テニス対決を了承し、この舞台を整えて終始真面目なスタンスで見届けてくれたフェニックス学院のコーチが、今回の影の立役者であったことは間違いない。