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キミとアイドルプリキュア♪ 第29話 「メロロンのともだち」 感想

キミとアイドルプリキュア♪ 第29話 「メロロンのともだち」 感想

メロロンが心を開きかけた矢先に訪れた急転直下の事態!

心を許したプリルン以外の者にはどこまでも頑ななままで在り続けたメロロンの心に差し込んだ一筋の光と活路。似たような境遇や経験を持つななが、メロロンのことを気にかけ彼女に優しく寄り添いつつ、勇気を以て一歩進んだ先に待ち受けている景色や可能性を説くのは良いなと思えたところですし、ザックリー相手にも希望をもたらした今のななが語るからこそ彼女の言葉はメロロンの心に響くのだろう。

本当はみんなと友達になりたい。素直になりたい気持ちは持っているのに反射的に自らの思いを否定してしまう。そんな長年に渡って染み付いた習性と言いましょうか。それを覆すのは容易なものではないでしょうが、類似性を持つカッティーやザックリーが改心した一件。また、種族を超えて互いを思い合い繋がる姿を随所で目の当たりにしてきたことで、メロロンの心も絶えず揺さぶりは掛けられ続けていました。

今回ななの言葉と優しさは大きなキッカケになるものでしたが、メロロンの心に大きな変化を与える下地となる部分はズキューンキッスの登場以降アイドルプリキュアのみんなと接する中で着実に蓄積されていた。今回はそれらの要素がようやく結実した瞬間でもあって、だからこそメロロンが誰かに言われたからでも手を引かれたからでもなく、自発的に自分の気持ちを素直に伝えようとしたことの意義。

そして、それを発しようとした直後に彼女の身に降り掛かったハートキラリロックの思わぬ形での作用。それらの要素が引き立ち非常に印象深いシーンとして成立していたところがあったと思うわけです。奇跡のような願いを叶えることと引き換えに、プリルンがハートキラリロックに捧げ封じたものは早い段階で明らかになっていましたが、長らく開示されなかったメロロンのそれをここで持ってくるかと。

非常に効果的ではあるんだけど、いざその時が訪れるとやっぱり衝撃的なものがあったのも事実なので。プリルンは大切なうた達との記憶を全て失っても、本人はあっけらかんとしていて脳天気な気質も相まって悲壮感は薄らいでいたところはあったけど、メロロンはプリルンにすら自らが封じたものを悟らせず、誰にも打ち明けることなく一人でずっと抱え込んでいただけに切なさも募ろうと言うもの。

それに関連するであろう自分の素直な気持ちを満を持して打ち明けようとしたところで、ハートキラリロックが呪いのアイテムのように作用し始めるものだからままならないものである。それだけになながメロロンに語りかけていたように。メロロンが秘していた心の内に触れて、その彼女が希望を見出すべく協力や助けを求め、みんながそれに応えてくれたのなら。それに勝る喜びもない。

奇跡のような大いなる願いを叶える為には代償が伴う。そのためにメロロンが支払うことになった一番大切な思いは何だったのか。それを賭してでも大好きなプリルンの為に一人で全てを抱え込んでいたメロロンの気持ちに皆が触れたとき、果たしてアイドルプリキュアのみんなは何を感じどのように動くのか。本当に大きな山場を迎えているだけに、次回がどんな話になるのか物凄く楽しみ!メロロンの気持ちが少しでも報われ、皆と本当の意味で仲間になれる日が訪れることを願ってやまない。そう、それでも願うのが人の性。

歴代シリーズで見てもコンビで変身する組や変身するのに妖精の存在が不可欠であるプリキュアは、単独で変身することが難しく、時にそれは弱点にもなり得る部分でもあったのですが、二人一組での変身が基本線だったズキューンとキッスの単独変身バンクが来ることになるとは夢にも思わず。いや、変身バンクはともかくとして単独で変身を成し遂げることになるとは思ってなかったので、そこは素直に驚きました。

二人一組でないと真価を発揮できないというかそもそもプリキュアに変身不可というのは、弱点でもあるけど単独で変身する者よりもより強い結びつきとか特別感みたいな要素も生じると思っているので。弱点であっても付加価値みたいな見方をすることも私個人はあるんだけど、これに関してはプリルンと出会う前は誰にも心を開かなかったメロロンが、そのプリルン以外に心を開き今回で言うならななと通じ合えたことを強調する意味合いもあるのかなと。

離れていても心は一つとはまた違ったところで、友達や仲間との双方向の繋がりがもたらすものの尊さ。その意義を掲げ描いている本作ならではのテーマあればこそと言いますか。その一つの象徴と言えるシーンだったのかもしれない。

これまでは主にメロロンが頑なで他の皆と心から一つに結びつけないところがあったプリキュア側ですが、ななとメロロンが『キズナのリボン』という本を一緒に探す過程で少しずつ心が解きほぐされて繋がっていく姿が描かれていました。

その一方で部下を顧みることなく自分の頑なさもあって周りから誰もいなくなってしまったチョッキリ団の現状と、チョッキリーヌ様が『部下をやめさせないための本』というハウツー本を手に取りながらも事態は好転せずプリキュア陣営に対して複雑な胸の内を吐露する姿はまさに対照的な構図で皮肉が効いている部分でもありました。チョッキリーヌ様の場合は本当に自業自得なところもあるんだけど。

ともあれそんな彼女もいなくなって初めてその有り難みが分かるではないが、ほんの僅かであっても自分に非があってこういうことになっているという負い目みたいな気持ちもあるんじゃないかなと。そうでなければ図書館に出向いてわざわざこのような本を手に取ることもないと思われるので。自分のやり方や気持ちだけを押し通すのではなく、目の前にいる相手のことをきちんと見て心を通わせることが如何に大切なことなのか。

アイドルとファンという枠組み以前の世渡りの基本みたいな概念になってるかもしれないけど、なかなか素直になれないながらも現状を変えたいと悩み苦しむ。そういう意味で今回のメロロンとチョッキリーヌ様は似たようなところがあったと言える…のかもしれません。そんなチョッキリーヌ様の心が満たされ救われる日は。まだ少し先になりそうだ。