自分にしか果たすことの出来ない役割。
この土地に生きる一人の人間としてのアスミの決断!
アスミの人間的な成長とそこから生じた一個人としての確たる決意が光りましたなぁ。アスミも厳密に言えば出自が特殊で人間ではなく、地球の意思によって生まれたような精霊的な存在。また、誕生直後はラテを守れるなら他のことはどうでもよく、当初はラテ様至上主義者な面が強調されていた。良くも悪くも無垢な存在でラテ以外のことは無関心だったんですよね。
それだけにアスミが今回一人の人間として、仲間や自分が暮らす街に住む人々を思い、それら全てを守る為に例え敬愛するラテの意に反しようとも自分の意思を主張し貫こうとする姿勢を見せてくれたのが感慨深い。のどか、ちゆ、ひなたらとの交流の中でそれぞれ感じ取ったことが、人間としての風鈴アスミを形作っていることをしっかりと示してくれて本当に嬉しくなる。
登場直後から現時点での印象の変化。人間的な成長度合いで言えば今作のプリキュアの中でも一番かもしれない。ラテも皆も人間界も全て救うという欲張りな選択。失敗を恐れずに挑戦する勇気。人間ではない自分にしか出来ない役割と言いつつ、どこまでも人間の感情に基づいた選択をしているアスミが、一人の人間として大敵たる病に立ち向かおうとしている姿は、それ故に愛しく尊いのです。
今回だけならアスミが主人公では?と思えるくらい主人公感に溢れていたけど、のどかとは違う形で自分にしか出来ない役割を果たそうとしているのも良かった。やっぱり一度その身を蝕まれ苦しんだ経験のあるのどかが、もう一度ビョーゲンズやメガパーツを取り込んで苦しい思いをするというのは、あまりに酷だしそれを周りが強いるのも無慈悲に過ぎるというものだ。
故にのどかに出来なかった選択を行う。自分にしか出来ない使命を果たし各々が自分にできる役割を全うすることで事の対処に当たる。これが突出した一人だけに頼るのではなくチーム全体で病に立ち向かう医療体制のあれこれにも合致するところなのかなと改めて感じた次第。特殊な技能を持つ者が突破口を開き、他の者は支援だったり別の箇所での対処に備える。それもチーム医療の在り方の一つか。
周りが誰かに犠牲を強いることを良しとしなければ自己犠牲を良しとはしないのも本作。アスミの決死の覚悟を支えることを決意するラテのパートナー性も、一人で全てを抱え込まず共有する本作の志向に沿ったものだし、ようやく最前線に降臨し対処の為の時間稼ぎをしてくれたテアティーヌ様を始め一人前ヒーリングアニマル勢もそうなのだ。強大な病を前に総力戦で事に当たる。それが人類側の武器にして最大の強みとも言えるだろう。
抗体ではないけどビョーゲンズの特性を利用した反撃というのも、当初プリキュア側と幹部勢の終盤における戦い方の一つとしてあるかなと思っていたので、それを取り入れてきたのは本作の特性から見ても自然の成り行きと言えるだろうか。強いて言うならシンドイーネを迷わず浄化して利用する辺りに、一遍の不条理さというか無慈悲さを感じてしまったのも事実なのだけど。
この終盤の敵幹部勢との応酬とか事の顛末に関しては、やはり全体の尺が短くなってしまった影響がモロに出ているのではと感じるところでもあります。まぁ致し方ないんだけどね。ともあれ全ての敵幹部が退場となり残されたラスボスとの最終決戦。それを乗り越えた先に待っているのはどんな世界か。残り少なくなったヒープリを最後まで見届けたい。
最後まで場を和ませ賑やかしてくれたシンドイーネさんに乾杯
ここで完全決着、絶対に仕留めるという意気込みで赴いてきたのに、事ここに至ってもまるで物語序盤のようなノリでスパークルと息の合ったコミカルな掛け合いを演じてくれたシンドイーネさんの揺るがぬ姿勢、もといあるがままの姿に感服するしかないのである。思えばひなたちゆちーとギクシャクしたこともあった水族館で、掴み合いのキャットファイトを繰り広げた因縁の間柄だったもんね。シンドイーネさんの退場、やっぱり寂しいものはあるよ。
ニャトラン先生の分かりやすい解説がキラリと光る
一人だけ話の要点を掴めず話についていけてないひなたちゃん。何となくの感じで相槌を打ったり慌てふためく姿がとても可愛らしかったが、そんな相方に対してニャトラン先生が繰り広げた例え話が分かりやすくて有難かったわい。公私に渡って支え合うのがパートナー。今作の中で一番パートナーの重要性を感じるのってやっぱりひなたニャトランコンビの関係性でした。