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ひろがるスカイ!プリキュア 第5話 「手と手をつないで!私たちの新しい技!」 感想

ひろがるスカイ!プリキュア 第5話 「手と手をつないで!私たちの新しい技!」 感想

手と手を繋ぎ共に困難に立ち向かうプリキュアの意義はヒーローの在り方にも通ずる。

プリキュアシリーズにおいて手と手を繋ぐ意義は、今更私が語るまでもなく大きなものでありますが、本作でソラとましろがそこに至るまでの経緯の中に、初代へのオマージュやリスペクトと共に、ヒーローを志した幼き頃のソラの生い立ちを絡め、彼女の中にある人並みの感情や年相応の少女としての弱さを結びつけて描く話運びが秀逸で尊さに溢れている。

周りの同い年の子達が当たり前にするような友達付き合いやお洒落すること等をかなぐり捨てでも幼き日に憧れたヒーローになるべく精進するソラの姿勢。そう在りたいと強く決意し、そこへ向かって一人で邁進することが今のソラを形作っているし、彼女の強さを支える根幹にもなっている。その彼女の根幹を揺るがし、同時にソラがより強く在る為に、ましろの存在感を際立つ関係性が成立してるのも良いなと。

ましろという初めての友達が出来たことで、ソラは大切な者を喪失する恐怖を初めて身をもって体験することになった。それ即ちヒーローとしての弱さにも通じるものであるし、幼少期に傍目に見ていた同年代の子達の姿。年頃の少女として振る舞うことことは、ソラにとって自分がヒーローではなく、どこにでも居る少女になってしまうことと同義でもあったのだろう。

つまり二重の意味で自らの弱さを痛感する下地というか生い立ちがあり、それだけにあれだけ意固地になってましろの申し出を断るのも理解は出来るのです。自分がこれまでやってきたこと、積み上げてきたもの。それらが全て瓦解して自分が自分でなくなる怖さ。憧れ目指したヒーローではいられなくなる恐れ。何より大切な友達であるましろが戦闘の矢面に立つことで傷つけられ失われてしまうかもしれない恐怖。

「ひとりぼっちを恐れない!それがヒーロー!」というソラの台詞に、彼女の生い立ちと彼女が追い求める理想のヒーロー像。その全てが集約されている。自分が自分であるために、強くあるために一人で戦い抜く。大切な人を守り困っている人を助けられるヒーローに。初めて出来た友達の参戦を頑なに拒むソラの姿に、彼女の優しさや不器用さや意固地な一面が凝縮されている。

一個人としての姿とヒーローとしての姿。その両方で揺れ動く彼女の心情を、ましろが支えとなり両軸で定まる感じに収まるのがまた心地よくて。大切な人を守りたい。困っている人を助けたい。ソラがヒーローとして掲げる理想は、何も彼女だけのものでもなくましろも同じように思っていることであり、ソラがましろを思うようにましろもソラのことを大切に思っている。

それを知ることでヒーローとしての志は他の人と共有できること。自分の志に同調し力を合わせて困難に立ち向かってくれる人がいること。一人で特訓に打ち込んでいた時に見た同年代の子とも異なり、ヒーローとしての自分の在り方を知った上で受け容れてくれて、その志を胸に抱き共に戦うと正面から言ってくれたましろの存在が、主に内面的な意味でソラを今までより強く逞しくしてくれる。

その一助となってくれているのが良かった。大切な人が出来たから初めて感じた恐怖。自分ひとりで気を張り詰めていた日々。それらを乗り越え志を同じくする仲間と共に歩む道のりは、ソラの軸をより安定したものへと昇華してくれるのだと思います。エルちゃんもいるとは言え見知らぬ世界に一人飛び込んできた経緯も相まって、ソラのヒーローとしての在り方を知った上で公私に渡って共に歩み支えてくれる。

ましろがいてくれることがどれだけ大きなことかというのも凄く伝わってきた。初代から受け継がれる手と手を繋ぐ意義を描くのと同時にソラの内面的精神的な安定を得る話運びが見事でした。ヒーローとしての道のりを共に歩む。キュアスカイからのキュアプリズムの名前呼びが、ただの形式で留まらずソラのヒーローとしての在り方に密接に結びついたものになっていたのも堪らない。

大切な人がいるから強くあれる。どんな困難にも臆すことなく立ち向かえる。プリキュアの本懐、見せてもらいました。最後にソラがましろから贈られた手帳に描いた「ふたりはプリキュア」の絵と文字。初代の志を引き継ぎながら自分たちもふたりで強いヒーローとして、プリキュアとして共に理想を求め歩む。そのメッセージがヒシヒシと伝わってきて最高だったよ。

特に二人体制の時のプリキュアにおける浄化技は、やはり互いの手を繋ぎ強く握り合ってこそですなぁ。初代の二人が用いていた「マーブルスクリュー」を彷彿とさせるカットは、やはりそれだけでも印象深いし歴代が受け継いできた魂を、プリキュアとしての大切な精神をスカイとプリズムも継承しているのだと思えて嬉しい見せ方でありました。

戦闘時以外でも二人の密接な結び付きを端的に表してくれますし。やっぱりいいものですね。これでこそプリキュアなのだと改めて。

オーバーリアクションしたり少しズレたところを気にしているましろの反応や発想が面白い。それでも可愛らしく見えてしまうからズルい。ソラの方もましろとの仲が深まるに連れて今まで見せなかった反応を少しずつ見せてくれていますし。相互作用で更に新たな一面が引き出されていくことに期待せずにはいられない。