前の家族と今の家族の間で揺れるいろはとこむぎの思い。
こむぎといろはにとってはまさに青天の霹靂。いつかは向き合わなければいけない日が来るかも知れないと思いながらも、もしかしたらその日は来ないままで平穏無事な生活を続けていけると思っていた矢先に、二人にとっては思わぬ形で元の飼い主の情報がもたらされたことにより、否が応でもこむぎの過去と二人のこれからについて考えざるを得ない状況に直面したことで、二人のこれまであまり見られない類の緊張感や反応が見られたのが印象的で。
来たるべきその日が来たことを直感で察したいろはが抱いた漠然とした緊張感。それでも務めて冷静に振る舞おうとしながらも胸中に抱いた思いは隠しきれなくて。
飼い主であるいろはの緊張や不安が伝播し、同じように漠然とした不安を抱く中で、前の飼い主である栗原さんとの出会いを経て、いろはが一番でありいろはとずっと一緒というこむぎの絶対の信条にすら一種の揺らぎが生じたことからしても、今回の一件は二人が出会ってから今に至るまでの間で、ある意味で二人を揺るがす一番衝撃的な出来事だったことが、ここからも伝わって来ると思います。
わんぷりの中でも犬組の二人は、王道を征く元気印の良い子であることは間違いない。曲がったことはしないし約束を違えるようなこともあり得ない。これまで築き上げてきたそのイメージ。印象が前提にあるからこそですね。こむぎの元の家族が見つかった時は、こむぎときちんとお別れしてこむぎを元の家族の元に返すこと。こむぎには伝えられていなかったいろはとお母さんとの間で交わされていた約束。
それを違えることになってもこむぎと一緒にいたい思いを吐露する。そんな、いろはの心情描写が引き立つのだと思うし、いろはがどれだけこむぎのことを大切に思っているのかということ。いろはがこむぎと出会ってから今までの間に二人で築き上げてきた時間がどれだけ大切で、これからの日々もこむぎと共に歩んでいきたいのかということ。
いろはとこむぎの根底にある思いと関係性。二人を形作る諸要素がこれでもかという程に強調されて伝わってくるのだと思う。いろはと出会う前のことを殆ど覚えてないこむぎにしても、前の飼い主である栗原さんとの在りし日の情景に触れながらも、それでも今のいろはと共に歩む道を過去と向き合った上で選ぶから重みが増すし、それはいろはの側にしても同じことが言える。
こむぎと共に過ごす楽しい日々の中で、それでも常に付き纏っていたであろう前の飼い主の存在。その相手に今の自分達の関係性と大切にしている思いを認めてもらい、また大事だったマロンちゃん改めこむぎを託されたことで、本当の意味で後ろ髪を引かれることなくこむぎと家族であることを、心の底から実感できるようになったのだから。
個人的にはこむぎの過去に関しては仄暗い事情があるのかなとかね。心無い飼い主に酷い目に合わされた挙げ句に、人間の一方的な都合で捨てられた可能性もあるのかなと思っていただけに、そうではなくやむを得ない事情によって然るべきところに預けられた上でのいろはとの邂逅だったことが分かったので、いろはとは違う意味で本当に安心しました。脱走を許したあの施設の管理体制とかは置いておくとして。
ともあれいろはとこむぎがこれからもずっと一緒でワンダフルな毎日が送れるようで何より。こむぎが前の飼い主からも今の飼い主からも絶大な愛情を注がれて育ってきたことが分かったので、逆に人間の都合で追い立てられ虐げられた狼たちとの共感を得るのは難しくなったかもしれないが、動物の身ながら人間の良い部分を誰よりも知るこむぎだからこそ訴えられるものがあるかもしれない。それもまた見どころの一つと言えよう。
普段はこむぎに対してぞんざいな扱いをしたり素っ気ない態度を取ることもあるけれど、同じ動物の身にして孤独を味わったこともあるユキが、まゆ以外の人たちのことを気にかけていて、仲間になったいろはとこむぎのことを良く見てくれているのが伝わってくる一連の会話シーンが凄く好き。言葉の端々から伝わってくる仲間への思いやりと温かみのある台詞。ユキ様が言うなら間違いない!
そんな人と動物の在り方を。双方の間に紡がれる確かな絆の形を目の当たりにしたからでしょうか。ほぼ何の前触れもなく突如としてお姿を変えて現れた人間姿のニコ様の高貴溢れる佇まい。やってることはチームわんぷりの尊き光景の覗き見なんですが、雰囲気的には前年ひろプリに出ていたエルレイン様やエルちゃんが大きくなった姿を彷彿とさせるものがある気がする。
個人的にプリキュアの紫系統のキャラクターは、高貴とか優雅なイメージを持つキャラも多いと思っているだけに、ニコ様の人間形態も(見た目だけに関しては)そこに属する感じになるのかな。この姿でニッコでーす☆みたいな言動も見たいといえば見たいけど。
それは置いておくとしてもプリキュア側の立場ある人の復活は、すなわち敵対勢力の親玉クラスの復活も同時に意味すると言っても過言ではない。既に予告で出ていた気もするけど眠りについたガオウ様も復活を遂げそうな気配はあるし、なんだかんだわんぷりも話数だけで言えば残り一クール分くらいしかないところまで来ているので。双方の立場あるキャラの復活からの物語終盤がどんなものになっていくのか楽しみだ。