死者の無念を汲む者と今を生きる者の意を汲む両者の対峙。
皆で仮装を楽しみ色々なお菓子を堪能する。そんな、お祭り騒ぎ的なハロウィン要素も程々に、今回は予想していた以上に本筋に深く関わる話運びがなされており、プリキュアであるこむぎやいろは達と敵対する狼達のリーダー。ガオウ様と本格的に対峙する大きな分岐点となる回でもありました。
しかし、ガオウ様のこむぎに対する立ち居振る舞いや、他の動物たちにも慕われる慈愛を感じさせるような姿を見て、プリキュア側と狼たちの互いの主張やスタンスが本当に相容れないものなのか。それを改めて考えさせられる内容でもありました。
ガオウ様が生み出したトラメやザクロが登場した当初の回でも思ったけど、彼らは自分たちを理不尽に滅ぼした人間に対する恨みこそ根深いものがあるが、他の動物たちに対しては基本的に友好的な姿勢であり、彼ら目線では傲慢で身勝手な人間から保護すべき対象であると捉えている節も随所に見受けられる。それは、今回こむぎに対して見せたガオウ様の世話焼きっぷりからも感じられるところで。
仲間を滅ぼされて彼らの無念を一身に背負うガオウ様の言い分は尤もなところがあるし、人間が信頼に値しない身勝手な生き物であることも一面においては揺るぎない事実。でも、それが全てでないのもまた事実。ガオウ様が狼を始めとして他の動物たちに優しさを以て接し慈しんでいるように、人間であるいろはやまゆ、悟たちを始めとしたアニマルタウンに住む人々も同じように接し、共生を図りつつ日々の営みを紡いでいる。
ここに両者の共通項があるようにも思えるわけです。確かにガオウ様が人間相手に強い怒りや憎しみを抱く気持ちは痛いほど分かる。容易に許せるものではないし相容れないと考えるのも道理。まして彼はかつての狼への仕打ちと人間がしでかした所業。それらを目の当たりにした当事者でもあるし、血縁関係にもない何世代も前の人間が仕出かしたことを自分事と直接結びつけられないプリキュア側と色々な面で温度差が生じるのも無理からぬことなのである。
だからこそ人と動物。そのどちらにも属し両方の立場で物事を捉えているこむぎやユキや大福。人の姿を取りプリキュアとして選ばれた彼女たちの存在が、極めて難しい立場にある相容れない両者を繋ぐ架け橋的な存在に成り得るのだと。特にガオウ様と同じイヌ科でガオガオーンになりかけた時に、こむぎが心象風景の中で見た白い狼のような存在等々。
やはり、こむぎが頑ななガオウ様の心を解き放つ鍵になりそうな感じは更に強くなった感じがします。個人的にも今回のこむぎとガオウ様の触れ合いは、微笑ましく心温まるものがあって良いなと思える描写になっていて好きですし。生存競争・弱肉強食の理を持ち出したらそれも一つの世の常ではあるが、やはりガオウ様たち狼側が人間の都合によって振り回されている被害者側でもあるだけに、心情的に寄り添いたくなる気持ちはどうしても湧き上がってしまう。
こむぎが引き合いに出した遠吠えのことを教えてくれたところにしてもね。還らぬことは分かりつつも今は亡き仲間への呼びかけ。彼らに対する慟哭と悔恨の念が込められたものな気がして切なくなるし。故に今回は死者の無念を汲むガオウ様と、今を生きる者の在り方を説くニコ様とプリキュアたち。その双方の立場や主張を死生観に纏わるハロウィン本来の意義を物語の本筋に落とし込んだような話運びでした。
本編の方は物語終盤に向けての足掛かりと言いますか。ここからがわんぷりの命題に向き合っていく最後の山場担っていくと思うので、どうしても話の内容もシリアス風味で思い空気になっていくところもあるだろうが、それだけに序盤のハロウィンを純粋に楽しんでいるところは救いでもありました。これがあるからバランスが取れるしガオウ様とは対極の人間と動物が共に生きる姿が際立つところもあるので。
兎姿に扮してまゆに弄られる悟といろはもネタ的な意味でも美味しいし、猫組二人の猫姿は安定の可愛らしさがありましたが、やっぱり主要キャラと同様に名前に動物の名を関する蟹江ちゃんと大熊ちゃんのそのまんまなコスプレ姿もインパクト抜群で見応えありました。やっぱりこの二人の存在感は抜きん出たものがあって素晴らしいの一言に尽きるのです。もっと出番が増えたら嬉しい。
そして隙あらば悟といろはを更にくっつけようと画策する我らが猫屋敷まゆさんも安定感抜群でした。まぁ絶対そこは弄ると思ったけど案の定だったもんね!お似合いを強調したり二人だけの写真をお勧めしてきたりと視聴者がやって欲しいと思ってることを二人に促す代弁者。視聴者代表は伊達じゃないところを改めて見せつけてくれました。いつまでも変わらないまゆちゃんのままでいて欲しい。