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トロピカル~ジュ!プリキュア 第44話 「魔女の一番大事なこと」 感想

トロピカル~ジュ!プリキュア 第44話 「魔女の一番大事なこと」 感想

長きに渡って後回しにしてきたことに向き合う瞬間!

全てを破壊する為に生まれた破壊の魔女様と人間の少女アウネーテの間に芽生えた友情。自分でも処理しきれない感情を胸の内に抱き、キュアオアシスとの決着を後回しにし続けたことで全ては忘却の彼方へと消え去り、記憶を取り戻した時に全ては泡沫の夢幻の如く失われ、今やるべきことをやらなかった悔恨の念に苛まれる魔女様がいるからこそ、本作の今一番大事なことをやるというテーマも引き立ちますなぁ。

その上で主人公のまなつが魔女様に対し、本当に後回しにしていることは決着を付けなかったことではなく、人間の女の子と仲良しになることだったこと。勇気を出せず一歩踏み出せなかった臆病さにあったことを提示し、今本当に一番大事なことは何かを力説してくれるところが凄く良かった。そして、その答えを提示できるのも自分の経験と仲間たちの姿を見てきたからこそだと思える。

自分の本当の気持ちを誤魔化していたさんご然り、臆病故に本当にやりたいことから目を背けていたみのり然り、大切に思っている相手と向き合うことから目を背け、すれ違いながらも関係性の決着を後回しにしていたあすか然り。幼少期のローラとの出会いと別れ際のことを悔い、今一番大事なことをやらなければ幸せになれないとその生き様を体現し続けてきたまなつ然り。

そして、一度は記憶を失いながらも今一度まなつを始めとする人間と友情を結び直したローラ然り。プリキュア達のこれまでの経験が、トロピカる部の面々の生き様が、足を止め膠着してしまった人が踏み出したことで掴み取れるものがあることを。過去の出来事を悔やみ繰り返さぬよう今を大事にし続けてきた積み重ねの先にあるものを指し示せるのではないかと思うわけです。

本作のラスボス格であった魔女様が作品のテーマを体現し、それを様々な経験を経て成長してきたまなつ達が、その問いかけに対する自分たちなりの回答を示して希望の光を救いの道をもたらす。この両者の関係性と作品のテーマに対するアプローチがとても綺麗に収まった回だったんじゃないかと思えた次第です。

いわば本作開始時点、もっと言えば始まるよりもずっと前の段階で既に改心の兆しを得ていた魔女様だからこそ、派手な本格バトルを伴う最終決戦を行う必要はなかったと言えるのかもしれませんね。生まれた時からそうあるべきという宿命からの脱却。出会いがもたらした変化と迎えた結末。アウネーテが魔女様に贈ったアネモネ花言葉を思うと感慨深さも増すというものです。

このように視聴者目線で見ると凄く収まりも良い感じなのですが、あるべき破壊の魔女としての姿を信奉し魅せられたバトラーからすれば、これはあってはならない物語の結末でもある。彼女が成せなかった破壊を自らが成すことが彼にとっての今一番大事なこととなった際に、プリキュア達は彼に対しても救いの道を示すことが出来るだろうか。はたまた…。

最初から最後まで魔女様の忠臣であり裏切ることはあり得なかったバトラーですが、思っていた形とは異なれども本作のラスボスとして立ちはだかることに。その彼にどのように立ち向かい物語の終着点をどこに持っていくのか非常に楽しみでもあります。残り僅かとなったトロプリの物語を最後までしっかり見届けたい。

乾いた心に!キュアオアシス!ということで伝説のプリキュア改めキュアオアシスの変身&浄化技バンクを見られて嬉しい!たとえ簡易バージョンでもこういうの用意してくれる制作陣の心意気が素晴らしいです。当代のプリキュアであるサマー達が五人がかりで行う合体技のランドビートダイナミックやマリンビートダイナミックを一人で使ってるあたりに凄さを感じずにはいられない。

最盛期の破壊の魔女様と単身で渡り合ってるあたり相当に強キャラの部類に入るのではないかと。ともあれ魔女様の生い立ちと今に至るまでの経緯、本作のテーマに対する問いかけを形成する上でも必要不可欠の存在なだけに、こうした見せ場もしっかり描写されて何よりなのでした。先代枠の中でもルミエルさんと同じくらい重要な位置づけにある御方ですなぁ。