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トロピカル~ジュ!プリキュア 第37話 「人魚の記憶!海のリングを取り戻せ!」 感想

トロピカル~ジュ!プリキュア 第37話 「人魚の記憶!海のリングを取り戻せ!」 感想

人間と人魚の交流の果てに待ち受けている運命。

奪われた海のリングの奪還からの新浄化技や新たな強化形態が見せ所になるかと思いきや、グランオーシャンと人魚の世界に存在する絶対の掟だったり、まなつの行動原理にして本作のテーマでもある今一番大事なことをやるスタンスの成り立ち。その重要性。まなつとローラの本当の出会いを起点とし、それらの要素に結びつける話運びや見せ方が本当に巧いなと感心させられました。

幼少期のローラとの邂逅を機に明日に後回しして苦い経験をしたからこそ、後悔することのないよう今を全力で生きるまなつの生き様にもより説得力が加わる。かつて後悔したからこそある今の在り方とは、即ち記憶が存在するから成り立つものでもあり、人間であるまなつと掟により記憶を吸い出されて失った人魚のローラの対比が物語構造全体に直結するほど重きのあるものにもなっていて凄い。

その上で掟だから記憶を奪われることを良しとせず、変化を求めようとするローラの姿勢は、ただ名誉欲や承認欲求から地位に固執していた当初のそれとは異なり、ローラ自身の確かな意思に基づく彼女だけの女王像、今のまなつ達との交流があるから芽生えた将来こうなりたいという願い。今があるから成り立つ人魚のローラの進路に纏わるお話にもなっていたと思います。

人間と人魚の交流は必ずしも良いことばかりをもたらすとは限らない。それもあってのグランオーシャンの掟なのかもしれませんが、あったはずの過去をなかったことにしてリセットした先に幸せな未来が待ち受けているとも限らない。グンバイヒルガオ花言葉にもあるようにまなつとローラの「絆」や「友達のよしみ」が、二人の未来を明るく照らし深く結びついた関係性で居続けることを願ってやまないのです。

本編開始時点よりも前に実は出会っていた二人の馴れ初めや最後のやり取りからしてもね。種族を超えた友情と結びつき。今一番大事なことをやった積み重ねの上に待っている未来。まなつとローラの出会いと関係性は、トロプリのテーマや物語構造の土台や基幹として横たわる程に重いのだが、その重さが心地良い。

全てが終わったその時にどのような形で別れ、二人の交流の行く先にどんな未来や運命が待ち受けているのか。物語最後の締め方も気になるが、それ以上に期待をもたされる内容に仕上がっていたかなと思います。

愚者の棺を解放したら本当に不老不死を得られるのかどうかは定かではない。定かではないのだが不老不死の概念を永遠の後回しと位置づける本作の発想はとても興味深いものがありました。不老不死=永遠の後回し。あとまわしの魔女が求める願い。全て後回しにするから今は何もしなくていい!となれば、それ即ち思い出が増えることもない一種の「停滞」であり、「変化」を求めるローラのそれとは対照的な物になっている。

加えて今一番大事なことをやるスタンスのまなつや本作のテーマと真っ向から対立するものでもあり、記憶が本作においてどれだけ重要な位置づけにあるものなのかを再認識させてくれる。伝説のプリキュアとの関係性も何となくではあるけど見え始めてきたような気もしてね。

肉体が滅びてもなおあとまわしの魔女の心を救おうとする伝説のプリキュアの心残り。それも彼女に記憶があればこそのものであるが、そんな二人は今のまなつとローラのようにかつて心を通わせあった人間と人魚だったんじゃないかとか。その思い出を消されたくないと強く願うからこそ全てをあとまわしにして停滞することを願ったあとまわしの魔女がいるんじゃないのかとかね。妄想は膨らむばかりなのです。

いずれにしても記憶と忘却。停滞と変化。人間と人魚が交流する本作の中にあって何を描き出そうとしているのかというものが、改めてハッキリ見えてくる回だったんじゃないかなと思った次第です。エルダちゃんも言及してたけどバトラーさんも明らかに腹に一物抱えていることはもはや疑いようもなく、ラスボスの座を奪い取りそうな気配も漂ってきたので。こっちサイドの動向も引き続き要注目なのです。

やっぱまなロラであることを強く実感させられました。上に書いたヒルガオ花言葉には他には「情事」を意味する花言葉もあるようで。いや、もうこれそういうことだよねという思いを更に強めた尊き一幕でありました。例えローラが掟に則り記憶を失ったとしても我らがヒーロー夏海まなつが結び直してくれるだろうと。最終的に二人が幸せな未来を共に掴み取れますように。