密やかに伸びやかに

アニメ、PCゲーム、PC関連のニッチな備忘録

ミュークルドリーミー 第37話 「杉山先輩のひみつ」 感想

ミュークルドリーミー 第37話 「杉山先輩のひみつ」 感想

兄より優れた弟など存在するはずが…!

IQ250超えの超天才児!杉山先輩の弟・亮仁の存在が兄の心をかき乱す!

アニメの超天才児設定にしても盛り過ぎなくらい属性てんこ盛りな杉山遼仁の弟である亮仁登場!杉山先輩が抱える心の闇に深く関わり、その存在を匂わされながらも全容が殆ど掴めなかった弟の素性が明るみとなりましたが、予想を遥かに超えるハイスペックぶりに驚くのと同時に、秀才であるところの杉山先輩が、自身の認識として自分が如何に凡庸な存在と捉えているかも痛切に伝わってきて辛い。

弟アッキーがここまでぶっ飛んだ天才っぷりだと、視聴者目線ではもう単純比較するのも何か違うし、早々に割り切った方が色々と楽だろうとか思っちゃうんだけど、当の杉山先輩本人からしたらずっと一緒にいる弟が自分のやることを上回り、その優秀さを常に見せつけられて劣等感を積み重ねるような境遇にいたのだから、そりゃ歪んでも無理ないし簡単にはいかないよね。身内で弟ってどうしても比較対象になっちゃうもの。

杉山先輩の家族が遼仁のことを大切に想っているのもこうなると逆に質が悪いと言えるのかもしれません。遼仁の両親も決して兄の遼仁を蔑ろにしていたわけではない。弟の亮仁もおそらく自分の能力が兄より優れていることを鼻に掛けているわけじゃないし、むしろ兄のことを純粋に尊敬していて慕っている年相応の子なんじゃないかと思える。

でも、それが杉山先輩当人にとっては逆に辛いし、家族がみんな自分のことを思ってくれるからこそ内に溜め込んで堂々巡りの思考の沼にハマっているとも言えるのだろう。みんな優しいし慕ってくれるから誰かに八つ当たりすることも出来ない。弟の存在もあり自分では決して自分を優秀だと思えないのに、周りは自分を完璧と持て囃し私設のファンクラブまで創設して崇めてくれている。

今にして思うとギャグテイストで行われていた描写の数々が、杉山遼仁にとってどれほど辛く彼を苦しめるものであったのかということも分かります。テニス部の後輩である朝陽に対して見せていた優しさや面倒見の良さも、本当なら遼仁が兄として弟にやってあげたかった当たり前の光景を、彼が潜在意識下で望んでいたことの表れと取ることも出来るのかなと今なら思えるのです。

当たり前は当たり前じゃない。ここ数話で自分も繰り返し使っているフレーズなんだけど、どこにでもいるような普通の兄弟ではなく、当然のように兄として弟を守り導く立場にはいられない杉山先輩の境遇も、そこに連なる一つの要素だったのだなと。離れてくれたしていた弟の帰国と受験本番が重なる心身への負担と、現実を突きつけられる焦燥が、彼の心を闇に沈ませ再び杉山仮面に堕ちる話運びもエグいけど巧い。

そうは言っても全体的に暗いわけではなく、本作らしい明るさやテンポの良さも健在なんだけど、ゆめとみゅーちゃんのお別れ話も含めて終盤の重さみたいなものが伴ってきているのを感じた今回のお話でした。杉山先輩周りの問題解決って結構根深く捻れていて難しそうだけど、どのような終着点に話を落ち着けるのかも見ものですね。単純な勝ち負けの話でもないですし。

ゆに様たちには杉山先輩の心を救う希望の光となってほしい

上述したように今は身内の優しさすら杉山先輩を苦しめる要因の一つになっている現状があると思うのですよね。それは幼馴染の百合先輩にしても同じことなのかもしれない。でも、だからこそ特別に秀でた弟の存在を知らず、色眼鏡もない状態で一個人としての杉山遼仁をおやびんと慕うゆに様とつぎはぎの二人が鍵なんじゃないだろうか。

悪夢の女王様に対する恩義もあるけれど敬愛するおやびんが苦しむ姿は耐えられない。ゆに様たちが女王様の意に反しでも、おやびんを救うために反旗を翻す展開とかきたらそれだけでもう泣いてしまう自信あるわ。女王様への忠義と、自分たちに優しくしてくれたおやびんへの親愛の情。その両者の間で揺れるゆに様たちの姿も見どころの一つであることに疑いはない。毎回言ってるけど願わくば皆が幸せな結末を迎えられますよう。