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ミュークルドリーミー 第30話 「ヨミーとムッキー」 感想

ミュークルドリーミー 第30話 「ヨミーとムッキー」 感想

心の奥に秘められた本当の気持ち。

自分でも気が付けないこともある人間の複雑な心模様

たとえ大人であっても人間自分の本当の気持ちにすら気付けず、また素直になれないこともままあるものです。人の心は複雑怪奇で必ずしも表に出ている感情が本心とは限らない。ましてやそれが未だ未成熟かつ多感な年頃の少年少女となればなおのこと。思っていることとは真逆のことをしてしまったり、意地を張って素直になれないことがあるのも無理からぬことであろう。

それは周りから見て優秀とされることこ先輩やゲストの衿人くんであっても例外ではなく、ことこに対する好意や尊敬の念が、いつのまにか対抗心に塗りつぶされ敵意に転じていた衿人くんもそうだし、自分の興味を突き詰める姿勢が災いし、彼に対する感謝の気持ちが伝わらず素っ気なさや他者に対する興味の薄さと取られたことこの言動にしてもそうなのだろう。

人知れず寂しさや孤独を抱えていたであろう中1時代のことこ先輩の描写を挟みつつ、本心を読み取ることや人の意を汲み取ることの難しさ。自分でも気付けないこともある人の心の複雑さ。相手に伝えることの難しさと重要性。それらをヨミーとムッキーを介して描きつつ、ゆめと朝陽と杉山先輩の繊細な恋愛模様に結びつける話運びが巧みでした。

今回はユメシンクロという特別な力を介して、ことこの本心が衿人くんに伝わり彼の奥底に眠っていた本当の気持ちに気づかせることが出来ていたが、普通はそうはいかないもの。目に見える言動や態度が全てではなく、伝える努力を怠っては本当の気持ちは伝わらない。たとえ互いにどれだけ親しい間柄であろうと、やはりきちんと言葉にしなければ伝わらないことってあるものです。

ゆめと朝陽は幼馴染で親しい間柄だが、お互いに相手の今抱えている気持ちが正確に伝わっているとは言い切れず、また自分の本心に未だ気が付いていないところがある。ゆめが美化フィルターを掛けて見ている憧れの杉山先輩にしても、目に見えている理想のヒーロー像とは裏腹に、その内面にとても複雑なものを抱え誰にも気づかれないままでいる。だからこそ百合先輩の重要性も増すと言える。

流れるような今回の話の流れを受けて次回のデート回がどのようなものになるか。どう転んでも物語全体を通して見ても大きな転換点になりそうなだけに凄く楽しみでもあり怖くもある。嬉し恥ずかし初々しいなんて展開には…多分ならないんだろうなぁ。

ことこ先輩は本当に罪作りな御人だよ!

ことこ先輩的には無自覚というか本当に他意はなく親切心や良かれと思ってやっているのだろうが、思春期男子にとってことこ先輩の仕草や言動にドギマギさせられるのも無理からぬことよ。中腰からの顔の覗き込みとか絆創膏お手当とかね。

その中でも最後の衿人くんの素直な本心を聞いて華麗にスルーした挙げ句、自分と同じ学校に行きたいと言っていた彼の気持ちをを横目に、推薦は辞退したと一切の悪気なくサラッと言ってのけたところは本当に罪作りだぜ。そのナチュラルな残酷さに戦慄、もといあぽ~んと呆気に取られた皆の気持ちも分かろうかと言うものです。ことこ先輩の無自覚さ・・・恐ろしい!

日向ゆめ、南川朝陽、杉山遼仁の関係の行く末や如何に

ことこと衿人が本心を伝達することの難しさからくるすれ違いを演じていた傍らで、ゆめ達の表に出ない本当の気持ちや相手に伝わっていない本心に触れた上で、杉山先輩をゆめに接触させて揺さぶってくる話運びの巧みさに舌を巻く。今回のエピソード単体としても非常に良く出来ていた回だと思いますが、次回への布石という意味でもこれ以上ないくらいの下地作りがなされていた。

ゆめに対する本心をヨミーに読み取られるのを拒んだ朝陽や、純粋なお誘いのようでいてその実ドリーミーストーンを奪うべく近づいてきた杉山先輩。そして、その二人の心の底にある本心に未だ気づかず目に映るものを純粋に捉えている主人公ゆめ。まさに今回のテーマの上にそのまま成立する三人の動向と心模様の機微が絶妙な加減で形成されていて魅入ってしまうのです。

目に映るものが全てではなく、表に出ている相手の言動が心の底にある本心を必ずしも反映しているとは限らない。打算含みのデートのお誘いもゆめからすれば夢のような出来事ならば、傍から見たらそういう風に取られてもおかしくない光景は朝陽にとって悪夢ともなり得る。杉山先輩の本心がゆめに伝わったのなら、彼女にとっても夢は容易に悪夢に転じることになるだろう。

杉山先輩の幼馴染である沢村百合を含めたら三角どころか四角関係な幼馴染二組の複雑なもつれ具合。ある意味本作の根幹を成す重要な要素。次回以降、大きな動きを見せそうですしどのように変わっていくか要注目。